防災士が解説|去年の灯油は使えません|色が変わっていなくても変質しています

物置から去年のポリタンクが出てきた。半分くらい残っている。これ、使えるのか。

結論から言うと使わないでください。そして厄介なのは、見た目では判断できないことです。

結論:持ち越した灯油は使わない

製品評価技術基盤機構(NITE)は、はっきりこう呼びかけています。

  • 「現在使用中の灯油は今シーズン中に使い切るようにしてください。」

シーズンをまたいだ灯油は変質している可能性があります。変質した灯油を石油ストーブに入れると、消火不良や発火といった事故につながります。暖房器具による火災は電気ストーブの記事でも扱っています。

NITEの調査では、平成20年度から24年度までの5年間に、変質灯油が原因と推定されるストーブの事故情報が8件(消火不良7件・発火1件)報告されています。そして同機構は、被害が拡大せず通知されなかったものを含めれば相当数起こっていると推定されるとしています。


色やにおいでは見分けられません

ここが、この話のいちばん大事なところです。

昔から「黄色くなっていたら変質」と言われてきました。実際、色が変わっていれば変質と分かります。ただしNITEの調査で、色の変化が見られない灯油であっても、ストーブに消火不良を起こさせる場合があることが判明しています。

つまり無色透明でも安全とは限りません。「見たかぎり去年と同じだから大丈夫」という判断は成り立たないということです。

においも同じです。変質すると酸っぱいようなにおいが出ることがありますが、出ないこともあります。五感で安全を確かめる方法がない、というのがこの問題の性質です。

市販の判定キットもありますが、確実を期すならシーズンをまたいだ時点で使わないと決めてしまうほうが簡単です。判断に迷う時間もなくなります。


なぜ変質するのか

NITEは、変質には日光と空気が著しく影響することが判明したとしています。

だから、同じ「去年の灯油」でも条件によって状態が違います。屋外に置いて日が当たっていたもの、ふたが緩くて空気に触れていたもの、継ぎ足しを繰り返したものほど、変質が進んでいます。

逆に言えば、保管の仕方を変えればシーズン中の劣化は抑えられます。持ち越しをすすめるわけではありませんが、冬のあいだの管理として意味があります。停電で暖房が全部止まったときの過ごし方は冬の停電の記事にまとめています。

よくあるのが、玄関先やベランダにポリタンクを置いているケースです。雨は避けられても日は当たります。買ってきた灯油をそのまま屋外に置く習慣があるなら、そこだけでも変えてください。


保管は「専用容器・暗所・5年」

NITEと大阪市消防局の案内から、守るべき点は3つです。

  • 灯油専用の容器を使い、ふたをしっかり締める(消防法令で定められた運搬容器に収納する)
  • 必ず暗所に保管する
  • 容器は5年を目安に更新する

ポリ缶が赤や青で不透明なのには理由があります。大阪市消防局は、JIS規格により赤や青の不透明に着色されており、紫外線を遮って灯油の変質を防ぐためと説明しています。中身が見えないのは不便ではなく、そういう設計です。

容器の寿命について、NITEは色あせやひび割れがあるものは買い替えをすすめ、日本ポリエチレンブロー製品工業会が製造後5年を経過した容器の取り替えを推奨していると紹介しています。製造年月は缶の表示で確認できます。


絶対にやってはいけないこと

大阪市消防局が明確に書いていることが2つあります。

  • 灯油用のポリ缶には絶対にガソリンを入れない
  • 不良灯油は絶対に使用しない

ガソリンは灯油とは別物で、はるかに引火しやすい危険物です。もし誤って入れてしまった場合は、絶対に機器を使用せず、専門の業者や製造メーカーに問い合わせてください。自分で抜いて何とかしようとしないでください。

もう1つ、灯油用のポリ缶は飲料水用には使えません。着色顔料が飲料水用に適さないためです。断水時に水を汲む容器として流用したくなりますが、別のものを用意してください。給水に持っていく容器は給水所の記事にまとめています。


余った灯油はどうするか

ここは正直に書きます。全国共通の決まった手順はありません。

公的機関の資料で明確なのは「使うな」「こう保管しろ」までで、処分の手順まで踏み込んだ記載は見当たりませんでした。実際の扱いは地域や店によって違います。

そのうえで、現実的な相談先は次のとおりです。

  • 購入した販売店やガソリンスタンド(引き取りの可否・費用は店によって違います)
  • お住まいの市区町村の廃棄物担当窓口
  • 最寄りの消防署

やってはいけないのは、土にまく、排水に流す、燃えるごみに出すことです。灯油は危険物で、一般のごみとしては回収されないのが通例です。

新聞紙に吸わせて捨てる、という話を見かけることがありますが、これもやめてください。少量でも引火の危険が残りますし、ごみ収集の作業中に火が出れば被害が他人に及びます。

量が少なければ、シーズン初めに使い切ってしまうのがいちばん簡単です。ただし変質が疑われるものは使わないでください。順序が逆になりますが、そもそも余らせない量で買うのが最良の対策です。


よくある質問

去年の灯油を新しい灯油に混ぜればいいですか

すすめられません。薄めたところで変質した成分がなくなるわけではありません。消火不良は、混ざっていても起こりえます。判断がつかないものを機器に入れないでください。

密閉して室内に置いていた灯油なら使えますか

条件としては良いほうですが、それでも「大丈夫」とは言えません。色が変わらなくても変質していることがある以上、保管状況から安全を証明することはできません。シーズンをまたいだら使わない、で統一するほうが確実です。

ファンヒーターのタンクに残った分はどうすればいいですか

機器に残った灯油の抜き方は機種によって違います。取扱説明書を確認してください。シーズン終わりにタンクも本体も空にしてからしまうのが基本です。残したままだと、次のシーズンに変質した灯油で点火することになります。

灯油はどれくらいもちますか

「何か月」という公的な数字は見当たりませんでした。NITEの呼びかけは期間ではなく「今シーズン中に使い切る」という形です。保管条件で変わるため、日数で管理するよりシーズンで区切るほうが実態に合っています。


今日1つだけやるなら、これ

物置か玄関にあるポリタンクの、製造年月を見てください。

缶に表示があります。5年を超えていたら、中身の前に容器を交換してください。ついでに色あせやひび割れがないかも見ておくと、それだけで今シーズンの管理の質が変わります。1分で終わります。


今日のチェックリスト

  • シーズンをまたいだ灯油は使わないと決めている
  • 色が変わっていなくても変質していることがあると知っている
  • 灯油は暗所に保管している
  • ポリ缶の製造年月を確認し、5年以内のものを使っている
  • ポリ缶にガソリンを入れたことがない
  • 余った灯油の相談先(販売店・自治体)を知っている

まとめ

  • 持ち越した灯油は使わない。NITEは「今シーズン中に使い切る」と呼びかけている
  • 変質灯油はストーブの消火不良や発火につながる(5年間で8件の事故情報)
  • 色の変化がなくても消火不良を起こすことがあるので、見た目で判断しない
  • 変質には日光と空気が影響する。専用容器・暗所・5年での交換を守る
  • ポリ缶にガソリンを入れない。飲料水用にも使わない
  • 処分は販売店・自治体・消防署に相談する。土や排水に流さない

灯油は、ふだん意識しないだけで危険物です。扱いを間違えると、暖を取るための道具が火元になります。火が出たときに何で消すかは消火用具の比較を見てください。今シーズンぶんを使い切る量で買う、それだけで多くの問題が消えます。


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