雪が降ると、屋根と車が心配になります。ですが製品評価技術基盤機構(NITE)のデータを見ると、雪や凍結による事故が最も多く起きている製品は、どちらでもありません。
給湯器です。
しかも一酸化炭素中毒の事故でも、製品別で最も多いのが給湯器でした。この記事では、何が起きるのかと、雪が降ったらどこを見ればいいのかを整理します。
結論:雪の事故で最も多い製品は、給湯器です
NITEが2010年度から2019年度までの10年間に通知を受けた製品事故のうち、除雪機での事故や積雪・凍結によって発生した事故は224件ありました。
製品別に見ると、最も多いのはガス給湯器・ふろがまで96件です。次が除雪機の50件、その次が凍結防止用ヒーターの36件でした。給湯器は、除雪機のほぼ2倍あります。
同じNITEの集計で、一酸化炭素中毒の事故は10年間に69件。こちらも製品別の最多はガス給湯器・ふろがまで29件、次いで携帯発電機が14件、暖房器具が14件です。
雪のほうでも、一酸化炭素のほうでも、いちばん上に来るのが給湯器だということです。
時期も出ています。雪・凍結に伴う事故は1月から2月に多く、一酸化炭素中毒の事故は11月から3月にかけて多く発生しています。
起きているのは「給排気口が雪でふさがる」ことです
では給湯器で何が起きているのか。NITEは、224件のうち誤使用や不注意・偶発的事故など製品に起因しない89件を分析して、こう書いています。
「給湯器・ふろがまでは、雪・氷で給排気口がふさがり異常着火する事故が一番多く発生しています」
件数は32件。89件の中で最も多い事故事象です。
異常着火というのは、うまく点火できずに未燃のガスがたまり、そこへ一気に火がつく現象です。被害の多くは機器そのものの破損ですが、周辺にまで及んだものもあります。
つまり、雪で穴がふさがるというだけのことで、32件が起きています。
もう1つの出口が、一酸化炭素中毒です
日本ガス石油機器工業会は、積雪についてこう書いています。
「積雪や屋根から落ちた雪によりガス機器の排気(給排気)トップがふさがれないように注意してください」「雪でふさがれると排気できなくなり、一酸化炭素中毒や異常着火事故に至るおそれがあります」
排気口については、ふさがっていると不完全燃焼の原因となり、一酸化炭素中毒になる、とも明記されています。
NITEも、一酸化炭素中毒を防ぐポイントとして「降雪・積雪時には、給排気口がふさがっていないか確認する」を挙げています。
ここは正確に書きます
NITEのデータで、給排気口の閉塞として記録が多いのは異常着火のほうです。一酸化炭素中毒による死亡事故17件(21人)で最も多かったのは、停電時に屋内で使った携帯発電機でした。
ですから「雪で給排気口がふさがると中毒死する」という書き方はしません。正しくは、ふさがると排気ができなくなり、異常着火と一酸化炭素中毒の両方のおそれがある、ということです。公的機関が挙げているのは、その両方です。
一酸化炭素は色もにおいもありません。頭が痛い、眠いと感じたときには、もう自力で動けなくなっていることがあります。気づける性質のものではないので、起こさないようにするしかありません。
凍結を防ごうとして、ふさいでしまう事故があります
これは知っておいてください。NITEの分類に、こういう事故事象があります。
「凍結防止用に布団などで覆い給排気口が閉塞されて、異常着火」
給湯器・ふろがまで3件、暖房器具で1件。凍らせたくないから覆ったら、排気ができなくなった、という事故です。善意の対策が事故になっています。
日本ガス石油機器工業会も、排気口を波板などで囲わないこと、外壁塗装などで養生シートに囲われているときは機器を使用しないことを挙げています。
配管に巻くのと、本体を覆うのは別の話です
水道管の凍結対策として、むき出しの配管に保温材を巻くのは有効です。これは水道管の凍結を防ぐにまとめています。
ただし、巻くのは配管です。給湯器の本体や給排気口を布団やシートで覆うのは、別の事故につながります。
給湯器自体の凍結対策は、電源を切らないことです。多くの給湯器には凍結防止ヒーターが内蔵されていて、電源が入っていないと働きません。覆うのではなく、通電させておく。ここが分かれ目です。
排気口のまわりに置いてはいけないもの
雪以外にも、ふさぐものがあります。日本ガス石油機器工業会は、排気口周辺に燃えやすいもの(洗濯物、植木など)を置くと引火や火災になるおそれがある、としています。
冬に増えるのが洗濯物です。乾きにくい時期に、日当たりのいい場所へ移したら給湯器の前だった、ということが起こります。
そして雪かきです。雪を寄せる場所を決めるときに、給湯器の前は外してください。かいた雪を積み上げれば、それはそのまま給排気口をふさぐ雪になります。
雪が降ったら見る場所
確認するのは、次の3つです。
- 給湯器の前面や上部にある給排気口が、雪で埋まっていないか
- 屋根の真下にあって、落雪が直撃する位置になっていないか
- 暖房機器の給排気筒(壁から外に出ている筒)の先が、雪でふさがっていないか
2つめが見落とされます。降り積もる雪だけでなく、屋根から落ちた雪が一気にふさぐことがあると、日本ガス石油機器工業会も明記しています。屋根の雪は雪下ろしの事故のほうでも扱っています。
よくある質問
お湯が出なくなったら、まず何を見ればいいですか
リモコンの表示と、給排気口です。日本ガス石油機器工業会は、機器本体やリモコンに故障表示が出た場合は使用を中止し、取扱説明書の指示に従って対処するよう案内しています。雪の日にお湯が止まったら、まず外に出て給排気口を見てください。
雪をどければ、すぐ使っていいですか
公的な資料に「どければ使ってよい」という記載はありません。表示が消えない場合や、使用中に異常を感じる場合は、販売店やメーカーに連絡してください。自己判断で使い続けないでください。
屋外にあるのに、なぜ家の中が危ないのですか
日本ガス石油機器工業会が一酸化炭素中毒について注意喚起しているのは、屋内設置式のガス給湯器です。屋内に設置されている機器では、排気が室内に流入すると中毒の危険があります。屋外設置の機器でも、排気口がふさがれば不完全燃焼や異常着火が起きるおそれがあるとされています。自宅の給湯器がどちらなのかを一度確認しておいてください。
除雪機のほうが危ないのではありませんか
どちらも必要です。件数で多いのは給湯器ですが、雪・凍結に伴う事故で起きた死亡事故19件(19人)は、すべて除雪機の事故でした。件数は給湯器、死亡は除雪機。分けて覚えてください。
エアコンの室外機も同じですか
同じではありません。この記事で扱っているのは、ガスや灯油を燃やす機器の排気の話です。燃やさない機器には、不完全燃焼も一酸化炭素もありません。ただし室外機が雪で埋まれば暖房の効きは落ちるので、確認しておく意味はあります。
集合住宅でも関係ありますか
給湯器がベランダや共用廊下に設置されていれば、同じことが起きます。吹き込んだ雪や、置いたもので給排気口がふさがらないかを見てください。
今日1つだけやるなら、これ
自宅の給湯器がどこにあって、給排気口がどちらを向いているかを、今日のうちに見ておいてください。
雪が降ってからでは遅い理由が2つあります。暗くて見えないことと、雪に埋もれて位置そのものが分からなくなることです。位置を知らない人は、雪の日に探すところから始めることになります。
スマートフォンで1枚撮っておけば、家族の誰でも確認できます。費用はかかりません。
今日のチェックリスト
- 給湯器の設置場所を確認した
- 給排気口がどちらを向いているか見た
- 屋根からの落雪が当たる位置かどうか確かめた
- 給湯器の前に物や洗濯物を置いていないか見た
- 雪を寄せる場所から、給湯器の前を外すと決めた
- 給湯器を布団やシートで覆わないと決めた
- 給湯器の電源は冬のあいだ切らないと決めた
まとめ
NITEの10年間の集計では、雪・凍結に伴う事故224件で最も多い製品がガス給湯器・ふろがまの96件、一酸化炭素中毒の事故69件でも最多が同じく29件でした。
起きているのは、給排気口が雪や氷でふさがることです。その結果として、異常着火と一酸化炭素中毒のおそれがあります。
そして凍結を防ごうとして布団やシートで覆う事故もあります。巻くのは配管、覆わないのは本体と給排気口です。
やることは単純で、雪が降ったら給排気口を見るだけです。そのために、どこにあるかを先に知っておいてください。
