湯たんぽは、冬の停電で使える数少ない熱源です。電気も火も使わずに朝まで温かい。防災の道具として、これはかなり強い性質です。
ただし条件があります。停電で使えるのは3種類あるうちの1つだけで、しかも湯たんぽの事故は5年間に108件報告されています。
そのうちやけどが68件。治療に1か月以上かかった重傷が31件です。そして事故で一番多いのは、低温やけどではありませんでした。
結論:多いのは破裂です
消費者庁が令和2年に公表した資料によると、事故情報データバンクには平成27年11月から令和2年10月までの5年間に、湯たんぽに関連する事故が108件寄せられています。
- やけど事故 68件
- そのうち治療に1か月以上かかっている重傷 31件
- 発生が多いのは12月、次いで1月・2月
事故の種類別で最も多いのは、破損・破裂・膨張でした。
意外なのはここです。やけど68件のうち、低温やけどの記載があったものは6件でした。湯たんぽのやけどというと低温やけどを思い浮かべますが、実際に多いのは、破裂して中の熱い湯や液体を浴びるやけどのほうです。
低温やけどそのものについてはこたつ・電気毛布の事故は2つあるで扱っています。この記事では、湯たんぽに固有の破裂のほうを中心に書きます。
湯たんぽは3種類あります
消費者庁は湯たんぽを3つに分けています。見分けがつかないまま使うと、注意点を取り違えます。
- お湯を入れるタイプ……金属、樹脂、ゴムなどの容器に直接お湯を入れる。金属製にはIHヒーター等で直接加熱できるものもある
- 電子レンジで温めるタイプ……水やお湯を入れて加熱するものと、内部の水・ジェル・ビーズなどの蓄熱材を加熱するものがある
- 通電して温めるタイプ……コンセントから通電して内部の蓄熱材を温める。「電気蓄熱式」「充電式」と呼ばれる。USBケーブルで発熱する製品もある
防災の観点では、ここが分かれ目になります。
停電で使えるのは、お湯を入れるタイプだけです
電子レンジで温めるタイプは、停電すれば電子レンジが動きません。通電して温めるタイプも同じです。前の晩に充電しておけばその夜は使えますが、翌日以降は充電できません。
停電が続く状況で繰り返し使えるのは、お湯を入れるタイプだけです。そしてそのためには、お湯を沸かす手段が別に要ります。カセットコンロがあれば足ります。冬の停電で何が止まるかは冬に停電したらにまとめました。
「防災のために湯たんぽを」と考えているなら、買うのはお湯を入れるタイプです。ここを間違えると、停電した日に使えません。
通電タイプは、49件中27件が通電中に破裂しています
タイプ別で最も事故が多いのが、通電して温めるタイプです。49件のうち27件が、通電中に破裂していました。半分以上です。
消費者庁が挙げている事例を読んでください。
定められた時間以上に通電して使っていたところ、ある日、本体が膨れてパンパンになっていることに気付き、コードを外そうと本体に触った途端に破裂。縫い目から破れて液体が寝間着の上から尻、腕、足に飛び跳ね、布団に飛び散った。大学病院に搬送され入院(平成28年10月、60歳代女性)。
もう1件は、床に置いて電源を入れた数分後に突然破裂し、中の液体が飛び散ってお腹や膝にかかりやけどを負ったもの。この製品はリコール対象品でした(平成29年2月、60歳代女性)。
通電タイプでやってはいけないこと
- 布団や毛布の中で通電する……安全装置が作動しなくなり、破裂のおそれがあります
- 使用しながら通電する……感電などのおそれがあります
- 傾いた場所や不安定な場所で通電する……本体表面の温度が局所的に上がり、劣化します
- 通電中にその場を離れる……異常に気づけません
1つめが特に重要です。寝る前に布団の中で温めておこう、というのがいちばん危ない使い方になります。
そして異常のサインは「膨らむ」です。異常に膨らむ、コードから煙が出るといった症状が出たら、直ちに使用をやめてください。
お湯を入れるタイプは、口金を外して加熱します
お湯を入れるタイプで破裂が起きるのは、口金(キャップ)を締めたまま加熱したときです。内圧が上がって破裂します。NITEが再現映像を公開しています。
IHヒーターや直火でそのまま温められる製品を加熱する場合は、必ず口金を外してください。
SGマークの付いた製品の中には蒸気を逃がす弁が付いていて、万が一口金を締めたまま加熱しても一回程度なら破裂しない仕組みのものがあります。ただし消費者庁は、そのような製品でも常時そうした使用を想定したものではなく、劣化が早まる原因になるとしています。古い製品や弁が付いていない製品もあります。
もし口金を付けたまま加熱してしまったら、しばらく時間をおいて冷ましてから扱ってください。すぐに口金を開けると、中からお湯が吹き出します。
シーズンの使い始めにやること
- お湯ではなくまず水を入れ、逆さにして振ってみて漏れがないか確認する
- 金属製は腐食で目視できない小さな穴が開くことがある
- 樹脂製は劣化で負担のかかった箇所が白化してくることがある
- 定められた湯量で使う。少ない湯量で繰り返すと内圧の変動で劣化が早まる
- 満杯と書かれている製品は、注ぎ口の根本まで入れる
- 温泉水や入浴剤を入れた水は腐食を早めるので使わない
口金のパッキンも劣化します。定期的に交換してください。使わない間は水を切って乾燥させ、直射日光の当たらない場所で保管します。
電子レンジタイプは、オート機能を使わない
電子レンジで温めるタイプの事例に、こういうものがあります。
オート機能で温めたら、レンジ内で破裂した。使い方の説明書は読まなかった(平成28年2月、50歳代男性)。
消費者庁は、過熱状態になるおそれがあるため、電子レンジのオート機能やおまかせ機能を使っての加熱はしないよう挙げています。出力と加熱時間を守ってください。
そして、加熱中に膨らんだり破裂して中身が漏れたりした場合は、すぐに電子レンジの扉を開けないこと。しばらく時間をおいて冷ましてから取り出します。
本体に亀裂や破れなどの異常が見られたら、廃棄して買い換えてください。
低温やけどは6件ですが、軽くはありません
件数こそ6件ですが、低温やけどの中身は重いです。
消費者庁は、皮膚の深いところまで達することがあり、見た目より重症の場合があるとしています。NITEも、皮膚の変化が少なく痛みも弱くても皮膚の深い部分でやけどを起こし、皮下組織が壊れて植皮手術が必要になり、治療に時間を要することがあると書いています。
重症化しやすいのは、高齢者や子ども(皮膚が薄い)、そして高齢者や糖尿病の方(感覚が鈍くなっていることがある)とされています。
消費者庁の答えは「布団から出して寝る」です
ここが明快でした。湯たんぽは就寝前に布団を暖めるのに使い、布団が暖まったら布団から出して就寝する。これが消費者庁の書き方です。
一緒に寝るものではなく、寝る前に布団を温めておくための道具だということです。
子どもや介護が必要な方が使う場合は、身体の同じ部位に触れ続けないよう、周囲の方が時々湯たんぽの位置を変えてください。
買うときに見るマーク
湯たんぽは種類によって、安全性を示すマークが違います。
- お湯を入れるタイプ……SGマーク(一般財団法人製品安全協会)。欠陥が原因で人身損害が起きた場合の賠償制度が付きますが、期限は購入日から金属製で1年、ゴム製・合成樹脂製で3年です
- 電子レンジで温めるタイプ……現在のところ、安全性を示すマーク等に係る基準はありません
- 通電して温めるタイプ……電気用品安全法の「電気あんか」として指定されており、PSEマークの表示がない製品は販売できません。第三者認証のSマークが付いた製品もあります
電子レンジタイプだけ基準がない、という点は知っておいてください。
もう1つ、リコールです。消費者庁の事例5は、リコール対象品と気づかずに使って破裂したケースでした。消費者庁のリコール情報サイトで確認できます。メールサービスの登録もできます。
よくある質問
結局どれを買えばいいですか
停電への備えとして買うなら、お湯を入れるタイプです。電気も電子レンジも要りません。SGマークが付いているものを選び、お湯を沸かす手段をあわせて用意してください。
死亡事故は起きていますか
NITEが平成19年度から23年度までを集計した資料では、ゆたんぽによる死亡事故は発生していません、と明記されています。ただし治療に1か月以上かかる重傷は、5年間で31件起きています。
若い人は大丈夫ですか
NITEの同じ資料では、20歳代・30歳代の女性が低温やけどによって重傷を負う事故が多くなっています。高齢者だけの話ではありません。
カイロも同じですか
低温やけどという点では同じ器具の仲間です。NITEの低温やけどの集計では、ゆたんぽ、電気あんか、カイロ(使いすて式)、電気毛布が挙げられています。避難所で使う場合の注意は避難所の寒さ対策にまとめています。
何年くらい使えますか
製品によって使用期間や回数を定めているものがあるので、取扱説明書を確認してください。消費者庁は、湯たんぽは使い方や経年劣化等により小さな亀裂や破損が生じることがあり、使い方を守らないと劣化が早まるとしています。寒い時期だけ使って長く保管する製品なので、使い始めの点検が重要です。
破裂して中身が漏れたら、すぐ拭いていいですか
直接触れないでください。消費者庁は、破裂等により中身の液体等が漏れたり飛び出てきたりした場合、高温となっている場合があるので直接触れないよう十分注意するよう挙げています。
今日1つだけやるなら、これ
家にある湯たんぽが3種類のどれなのかを確認してください。
お湯を入れるタイプなら、停電の備えになります。電子レンジか通電のタイプなら、停電の日には使えません。そのことを知っているかどうかで、冬の停電の晩の過ごし方が変わります。
確認したついでに、水を入れて逆さに振ってみてください。シーズン前の漏れ確認は、消費者庁が最初に挙げている項目です。1分で終わります。
今日のチェックリスト
- 家の湯たんぽが3種類のどれか確認した
- 停電で使えるタイプかどうか分かった
- 使う前に水を入れて漏れがないか確かめた
- 亀裂・白化・変形がないか見た
- 通電タイプを布団の中で通電していないか見直した
- 電子レンジのオート機能を使っていないか見直した
- 布団が暖まったら湯たんぽを出して寝ると決めた
- リコール対象でないか確認した
まとめ
湯たんぽの事故は5年間で108件、やけど68件のうち31件が治療に1か月以上かかる重傷でした。そして多いのは低温やけどではなく、破裂です。
通電して温めるタイプは49件中27件が通電中の破裂でした。布団の中で通電しないこと、その場を離れないこと。お湯を入れるタイプは、加熱するとき必ず口金を外すこと。電子レンジタイプは、オート機能を使わないこと。
低温やけどのほうは、布団が暖まったら出して寝る。これで防げます。
そして防災の道具として選ぶなら、お湯を入れるタイプです。停電しても使えるのは、これだけです。

