防災士が解説|セルフ給油の火災は給油中に多い|途中で車に戻ると帯電します

セルフスタンドで給油するとき、除電シートに触れている人は多いと思います。ただ、それで終わりにしていると、残り3分の2のリスクが残ります。

消防庁がまとめたセルフスタンドの静電気火災18件のうち、除電シートで防げる場面で起きたのは6件。残りの12件は、給油を始めたあとに着火していました。

そして静電気の火災は、乾燥する冬に多くなります。灯油を買いに行く季節と重なります。


結論:火災の3分の2は「給油中」に起きています

消防庁は、セルフスタンドの運用が始まった平成10年から平成17年までに起きた、静電気が原因と考えられる火災を集計しています。報告された18件の内訳はこうです。

  • 給油キャップを開けた際に着火 6件
  • 給油中に着火(再開時、終了後を含む) 12件

前半の6件は、平成13年に消防庁が静電気除去の徹底を通知し、各スタンドに除電シートが置かれるようになって減りました。

減っていないのが後半の12件です。消防庁も「給油中に着火する火災は依然として発生が続いている」と書いています。

そして月別に見ると、相対湿度が低く乾燥した時期に多く発生していることが特徴だとされています。


なぜ給油中に着火するのか

仕組みはこうです。給油ノズルを握っていれば、人体にたまった静電気はノズルを通じて逃げます。だから握り続けているかぎり、帯電しません。

問題は、手を離したときです。

ノズルから手を離して歩き回ると、衣類の擦れでまた帯電します。その状態でノズルを握り直すと、給油口から出ているガソリンの蒸気に放電して着火することがあります。

実際に起きた火災

消防庁の資料に、東京消防庁が調査した事例が載っています。平成17年12月12日、東京都江東区のセルフスタンドで起きたものです。

当日の気象は快晴、気温8.5度、相対湿度29パーセント。乾燥した冬の日です。

運転者は車を降り、給油口の蓋を開け、鉄板部分に触ってドアを閉めました。ただし、除電シートには触れていません。

その後ノズルを握って給油していたものの、給油中の振動が手に伝わっていないような気がしたため、3回給油を停止。従業員を探すために車両の周囲を5〜6メートル歩いています。

3回目に再び給油を開始してしばらくすると、給油口付近から炎があがりました。服装は、ジャンパーが化学繊維でした。

幸い、ぼやで済んでいます。ですが「途中で止めて、歩いて、また握る」という流れが、そのまま着火につながったことが分かります。


消防庁が示している給油の手順

資料には、静電気を逃がす場所を組み込んだ9つの手順が図で示されています。

  • 車から降りてドアを閉める(車体の金属部分に触れることで静電気除去)
  • 静電気除去シートに触れる(シートに触れることで静電気除去)
  • フューエルリッド(給油口カバー)を開く(金属部分に触れることで静電気除去)
  • 給油キャップを開ける
  • 給油ノズルを握り、給油口の奥までノズルを差し込む(レバーを握ることで静電気除去)
  • 給油する
  • 給油終了後、給油ノズルを引き抜く
  • 給油ノズルを所定の位置に戻す
  • 給油キャップを閉める

静電気を逃がす機会が4か所あることが分かります。1か所でも抜けると、そのぶん帯電したまま進みます。

そしてこの図には、注意書きが1行添えられています。

「①〜⑨の給油作業は必ず一人で行う」

途中で誰かに代わらない、ということです。代わった人は除電の工程を踏んでいません。


冬に注意が必要な理由

消防庁は、セルフスタンドでの給油についてこう書いています。

「特に冬場は、衣服等により人体に帯電しやすい季節となりますので、静電気除去に十分ご留意ください」

あわせて挙げられている注意事項は5つです。

  • 静電気除去シート等により静電気を十分除去すること
  • 車に給油する油種を十分に確認すること
  • ライター、たばこ等の火気は使用しないこと
  • ガソリンの容器への小分けは行わないこと
  • 自動車又は原動機付自転車以外(例:水上バイク等)への給油は行わないこと

なお消防庁の集計では、1万施設あたりの給油中の火災事故発生割合は、セルフスタンドのほうがフルサービススタンドより高い傾向にあるとされています。自分でやる以上、手順は自分で守るしかありません。


災害に備えてガソリンを置いておけますか

ここからが、防災の話です。停電や災害に備えて発電機用のガソリンを用意しておきたい、と考える方は多いと思います。ルールを先に確認してください。

ポリタンクには入れられません

消防庁のリーフレットに、はっきり書かれています。

「ガソリンは、灯油用ポリ容器に入れることはできません」

国民生活センターも、消防法令によりガソリン携行缶以外のポリタンクなどでガソリンを運搬することは禁止されていると説明しています。刈払機や発電機への給油でも、携行缶が必要です。

灯油用のポリ缶にガソリンを入れてはいけないという話は去年の灯油は使えませんにも書きましたが、容器の側から見ても同じ結論になります。

セルフでは、自分で入れられません

これは知らない方が多いところです。消防庁のリーフレットにこうあります。

「セルフスタンドにおいても、ガソリン容器への詰替えは、ガソリンスタンドの従業員が行う必要があります」

セルフだから自分で携行缶に入れられる、ということはありません。従業員に依頼してください。

購入時に本人確認があります

令和2年2月1日から、ガソリンを携行缶で購入する際には、消防法で次のことが義務付けられています。

  • 本人確認(運転免許証の提示など)
  • 使用目的の確認
  • 販売記録を作成すること

買えなくなったわけではありません。手続きがある、ということです。身分証を持たずに行くと買えないので、そこだけ覚えておいてください。

携行缶の選び方

国民生活センターによると、携行缶の最大容積は消防法令で22リットルと定められています。落下、気密、内圧、積み重ねの各試験に適合している必要があり、適合を示すKHKマークまたはUNマークが付いた製品が多くあります。

買うときは、このマークを見てください。


携行缶は、使うときより保管のほうが危ない

ここが意外でした。国民生活センターに寄せられたテスト依頼3件は、いずれも保管中にガソリンが漏えいしたものでした。うち2件は、温度変化の繰り返しによって亀裂が生じたと考えられています。

さらにテストでは、直射日光の当たる車内で内容物が60度以上になり、内圧が高まった状態でキャップを外したところ、ガソリンが激しく噴出しました。

つまり、車に積みっぱなしにするのがいちばん危ない保管方法だということです。

国民生活センターのアドバイス

  • 高温になる場所(直射日光が当たる場所など)には保管しない
  • 温度変化の大きい場所での保管を避ける
  • こまめに圧力調整を行う(エア調整ねじ付きの製品は、キャップを外す前に圧力を調整すると噴出を防げます)
  • ガソリンは必要以上に保管しない

最後の1行が、防災の文脈では重要です。「備えておく」という発想と、「必要以上に保管しない」という指導は、正面からぶつかります。

停電に備えるなら、ガソリンをためるよりポータブル電源や、電気を使わない暖のとり方を先に考えるほうが安全です。冬の停電でどう過ごすかは冬に停電したらにまとめています。


よくある質問

除電シートに触れれば大丈夫ですか

足りません。18件のうち除電シートで防げる「給油キャップを開けた際」の着火は6件で、残り12件は給油中に起きています。シートは入口の対策で、出口の対策ではありません。

給油中にスマートフォンを見てもいいですか

消防庁の資料に「スマートフォンで着火した」という記載は見当たりませんでした。ですから、そこは断定しません。はっきりしているのは、ノズルから手を離して歩き回ると再び帯電するということです。消防庁が挙げているのは「ライター、たばこ等の火気は使用しないこと」です。

給油を途中で止めてしまったら

再開する前に、もう一度静電気を逃がしてください。除電シートか、車体の金属部分に触れることです。実際の火災事例は、3回止めて歩いたあとの再開で起きています。

携行缶は何リットルまでですか

容器そのものの最大容積は22リットルです。なお、持ち運べる量や保管できる量には別の規制があり、自治体によっても扱いが異なります。多めに持つ予定があるなら、最寄りの消防署に確認してください。

水上バイクには入れられますか

セルフスタンドでは、自動車または原動機付自転車以外への給油は行わないこととされています。

灯油はどうなのですか

灯油は灯油用のポリタンクで構いません。ガソリンとは引火点が大きく違う別物です。灯油の保管と劣化については去年の灯油は使えませんにまとめています。


今日1つだけやるなら、これ

次に給油するとき、途中で止めないと決めてください。

入れ終わるまでノズルから手を離さない。もし止めてしまったら、再開前にもう一度除電シートか車体の金属部分に触れる。これだけです。

18件中12件が給油中に起きている以上、ここがいちばん効きます。費用もかかりません。


今日のチェックリスト

  • 除電シートに必ず触れると決めた
  • 給油を途中で止めないと決めた
  • 止めたら再開前に静電気を逃がすと覚えた
  • 給油は一人で最後までやると決めた
  • ガソリンはポリタンクに入れられないと知った
  • セルフでは従業員に詰替えを頼むと知った
  • 携行缶を買うならKHKかUNマークを見ると決めた
  • 携行缶を車に積みっぱなしにしていないか確認した

まとめ

セルフスタンドの静電気火災18件のうち、12件は給油中に起きています。除電シートに触れるのは入口の対策で、それだけでは足りません。

給油を途中で止めて歩くと、また帯電します。実際の火災も、3回止めて歩いたあとの再開で起きました。入れ終わるまで手を離さない。止めたら触り直す。

そして災害に備えてガソリンを置こうと考えているなら、ポリタンクには入れられず、セルフでも自分では詰替えできず、購入時に本人確認があります。保管中の漏えい事故も起きています。

乾燥する冬は、人体に帯電しやすい季節です。灯油を買いに行くついでに、給油の手順を見直してください。


次に読むべき記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA