断水したら給水所に水をもらいに行く。そのためにポリタンクを買っておこう。
この準備には、見落とされがちな問題があります。20リットルのポリタンクは、水を入れると20キロになります。
容器を買ったことで備えた気になりますが、使えない容器は持っていないのと変わりません。断水してから気づくと、その日は水を運べずに終わります。
結論:満タンのポリタンクは、たいてい運べません
水は1リットルで約1キロです。つまり容器の容量が、そのまま重さになります。
- 10リットル=約10キロ(米袋1つ分)
- 20リットル=約20キロ(米袋2つ分)
- 2リットルのペットボトル6本=約12キロ
20キロを手で提げて、数百メートル歩けるでしょうか。階段を上れるでしょうか。容器は「入る量」ではなく「運べる量」で選ぶ必要があります。
東京都水道局も、持ち物として「背負えるタイプの給水袋や、空のペットボトルとリュックサック」を挙げています。手で提げるのではなく、背負う前提です。
給水所は、思ったより近くにあります
東京都の場合、災害時給水ステーションは「お住まいからおおむね半径2kmの距離内に1か所として、都内213か所(浄水場、給水所、応急給水槽等)に開設します」とされています。
つまり、遠くまで行く想定ではありません。問題は距離ではなく、場所を知らないことです。断水してから調べようとしても、そのときスマホが使えるとは限りません。
開設状況は「水道局HPや東京都水道局アプリのほか、水道局の各庁舎の掲示物、拡声器付広報車、水道局が配布するビラ等」で知らされます。在宅避難をしていると、こうした情報が届きにくくなる点にも注意してください。また「夜間・休日であっても開設できるように体制を整えています」とされています。
避難所でも給水が行われることがあります。東京都の案内では、応急給水槽等を補完するために避難所の応急給水栓や、あらかじめ指定した消火栓を使って区市町が開設するとされています。
なお、ここで挙げた213か所や半径2kmは東京都の数字です。お住まいの自治体では場所も数も違うので、自分の市区町村の水道局のページで確認してください。
何を持っていくか
東京都水道局は「水を入れる清潔な容器をご用意ください」としています。そのうえで現実的な組み合わせはこうです。
- 背負える給水袋(10リットル前後。たたんで保管できる)
- リュックサック+空のペットボトル(家にあるもので足りる)
- キャリーカートや台車(あれば、重い容器でも運べる)
- 小さめのポリタンク(買うなら10リットル以下)
意外に効くのがリュックです。特別な道具を買わなくても、2リットルのペットボトルを3本入れれば6キロで、背負えば歩けます。往復を増やすほうが、一度に無理をするより確実です。
マンションの上階に住んでいる場合は、エレベーターが止まっている前提で考えてください(マンションの防災の記事にまとめています)。階段で10階まで20キロを上げるのは、現実的ではありません。
持ち手の形も効きます。細いプラスチックの取っ手は、10キロを超えると指に食い込んで数分ともちません。給水袋を選ぶなら、肩で背負えるか、幅の広いベルトが付いているかを見てください。
もらった水は、いつまで飲めるか
ここが意外と知られていません。水道水には消毒用の塩素が入っていますが、その効果は時間とともに失われます。
柏市の案内では、「保存期限は冷暗所で3日間、冷蔵庫で1週間くらいが目安です」とされています。
そして期限を過ぎた水は捨てる必要はありません。同じ案内に「保存期限を過ぎた水は、塩素の消毒効果がなくなるので、洗濯や散水など飲用以外に使ってください」とあります。断水中なら、トイレを流す水や手を洗う水として使えます。体を清潔に保つ方法は断水でお風呂に入れないときの記事にまとめています。
つまり給水は「3日ごとに行くもの」と考えておくのが現実的です。一度に大量にもらっても、飲用として持つのは3日程度です。
容器にくんだ日付を書いておくと迷いません。断水中は日付の感覚がなくなります。テープに書いて貼るだけで十分です。
入れるときの注意
容器に入れるときにも決まりがあります。柏市の案内から3つです。
- 清潔でふたのある容器いっぱいに入れて密閉する(できるだけ空気に触れないように)
- 浄水器を通さない(浄水器によっては消毒用の塩素を取ってしまうものがある)
- 煮沸しない(煮沸すると塩素の効果が失われる)
3つとも理由は同じで、塩素を残すためです。きれいにしようとした行為が、かえって日持ちを縮めます。普段の感覚と逆なので、覚えておいてください。
容器の口まで水を入れて空気を抜くのも、同じ理由です。すき間に空気が残ると、そこから劣化が進みます。
よくある質問
どれくらいの量をもらえばいいですか
柏市の案内では、備蓄の目安を「1人1日3リットル×3日分」としています。飲用と調理に限った量です。ただし実際にはトイレや手洗いにも水が要るので、生活用水はこれとは別に考えてください。備蓄全体の目安は備蓄は何日分必要かの記事にまとめています。
ポリタンクは買わなくていいですか
買うなら小さめにしてください。10リットル以下なら、満タンでも10キロなので運べます。20リットルの容器は、水を入れた状態では動かせないと考えたほうが現実的です。置き水を作るのには使えます。
行列に並ぶ時間はどれくらいですか
状況によるので、時間は読めません。ただ容器が小さいほど並び直す回数が増えるので、家族で複数の容器を持って一度に行くほうが効率的です。家族のうち体力のある人だけが行く形にすると、往復のたびに同じ人が消耗します。
給水所の水はそのまま飲めますか
水道水と同じものなので、飲めます。ただし上に書いたとおり、容器が清潔であることが前提です。中が洗えていない容器や、ジュースが入っていた容器を使うと、水のほうは問題なくても容器から傷みます。入れる前に中を洗って、よく乾かしておいてください。
風呂の残り湯は使えますか
飲用には使えませんが、トイレを流すなどの生活用水には使えます。ただし断水中にトイレを流していいかは別の判断が必要です。地震のあとは排水管が壊れている可能性があるので、確認が取れるまでは流さないでください。詳しくは携帯トイレの記事を見てください。
今日1つだけやるなら、これ
自分の家から一番近い給水所がどこか、調べて紙に書いてください。
「〇〇市 給水所」や「〇〇区 災害時給水ステーション」で検索すれば、自治体のページに一覧があります。3分で終わります。スマホのスクリーンショットだけでなく紙に書くのは、停電でスマホが使えないことがあるからです。
今日のチェックリスト
- 家から一番近い給水所の場所を知っている
- その場所を紙にも書いてある
- 背負える容器(給水袋かリュック)がある
- 20リットルの容器は満タンでは運べないと知っている
- もらった水の飲用期限は冷暗所で3日だと知っている
- 期限切れの水は生活用水に回すと決めている
まとめ
- 水は1リットル=約1キロ。容器は「入る量」でなく「運べる量」で選ぶ
- 東京都水道局は「背負えるタイプの給水袋や、空のペットボトルとリュックサック」を挙げている
- 東京都では半径2km以内に1か所、都内213か所に開設(自治体により異なる)
- 開設状況はHP・アプリ・掲示・広報車などで知らされ、夜間休日も開設体制
- もらった水の飲用期限は冷暗所で3日、冷蔵庫で1週間(柏市)
- 期限を過ぎた水は洗濯や散水など飲用以外に使う
給水所の準備というと容器を買う話になりがちですが、本当に要るのは場所を知っていることと、背負えることの2つです。どちらもお金はかかりません。
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