防災士が解説|こたつ・電気毛布の事故は2つある|コードの断線と44度の低温やけど

こたつや電気毛布は、ストーブのように炎が見えません。そのぶん「燃えるもの」だと思われていない暖房器具です。

ですが製品評価技術基盤機構(NITE)の集計では、電気こたつ・電気カーペット・ゆたんぽの3つだけで5年間に316件の事故が起き、そのうち12件で人が亡くなっています。

そして事故は11月から増え始めます。この記事では、何がどう起きるのかを2つに分けて整理します。火災と、低温やけどです。


結論:事故は11月から増え、1月がピークです

NITEが平成24年に出した注意喚起では、平成19年度から23年度までの5年間に、次の件数が報告されています。

  • 電気こたつ 128件
  • 電気カーペット 101件
  • ゆたんぽ 87件

合計316件で、被害の内訳は死亡12件、重傷41件、軽傷52件、拡大被害138件、製品破損等73件です。人が死傷した事故は、毎年の発生件数の約3割を占めています。

そして3製品とも、11月から事故が増え始め、1月に最も多くなります。使う機会が増える時期と、そのまま重なります。

なお、この集計自体は古いものです。ただしNITEは2026年1月にも電気マット・電気毛布・電気あんかについて同じ趣旨の注意喚起を出しており、起きている事故の中身は変わっていません。


火災は、ほとんどコードから起きます

こたつと電気カーペットで多い事故として、NITEは2つの現象を挙げています。

  • 電源コードへの過度の荷重、繰り返しの屈曲や引っ張り等により、芯線が断線し、スパークが起きて発火した
  • 可燃物がヒーターユニットと接触し、過熱して発火した

1つめが、いちばん多い入り口です。

コードは「半断線」してから燃える

コードの中には細い銅線が何本も束ねられています。踏まれたり、折り曲げられたり、家具の脚で挟まれたりすると、この銅線が少しずつ切れていきます。

全部が切れれば電気は流れなくなるので、すぐ気づきます。問題は一部だけが切れた状態です。これを半断線といいます。見た目は普通に使えていて、細くなった部分に電気が集中し、そこで発熱とスパークが起きます。

NITEの事故事例には、こたつの電源コードをやぐらの脚部で固定しなかったためにコードが垂れ下がり、踏まれるなどして半断線し、異常発熱して出火したケースがあります。取扱説明書には、コードを2箇所で固定するよう書かれていました。

電気毛布でも同じです。コードをベッドの脚で踏んだ状態で使ったために芯線が切れ、ショートして周囲に延焼した事例(2019年・岩手県・80歳代男性)が報告されています。

やってはいけないコードの扱い

  • 家具の脚で踏む、挟む
  • こたつのやぐらに固定せず垂らしたままにする
  • 無理に強く折り曲げる、引っ張る
  • 収納するときに本体へ巻き付ける
  • 束ねたまま使う

最後の2つは意外に思われるかもしれませんが、NITEは「電源コードを無理に曲げたり引っ張ったりせず、本体に巻き付けない」と明記しています。収納時に本体へ巻き付けたことで断線した事例も挙がっています。

こたつ布団をやぐらに押し込まない

2つめの現象がこれです。つまずき防止などの理由でこたつ布団をやぐらの中に押し込むと、ヒーターの保護カバーに接触して焦げます。本体と取扱説明書の両方に、押し込まないよう書かれています。

さらに重いのが、ヒーターユニットを本体から外して床に置いて使ったケースです。こたつ布団などの可燃物と接触して出火し、建物3棟を全焼する火災になりました。ヒーターユニットの単体使用は禁止されています。

電気カーペットは10年で部品が劣化する

電気カーペットにはもう1つ、経年劣化という原因があります。基板内のリレー接点が劣化して、発煙や異常発熱に至るというものです。

NITEは、通常の使用環境で10年をめどに部品の性能が劣化して起きた事故を、経年劣化による事故として扱っています。10年が1つの目安になります。


亡くなっているのは、ほとんど高齢者です

こたつに絞った集計もあります。NITEの平成22年の注意喚起では、平成17年度から21年度までの5年間に「こたつ」による事故が179件ありました。

被害の状況は、死亡事故22件、重傷事故3件、そして一室以上に広がった火災が85件です。

注目したいのは年齢です。死亡者は27人で、そのうち60歳代以上が19人、つまり70%を占めています。

そして死亡・重傷事故は、すべて「製品に起因しない事故」か「原因不明のもの」でした。製品の欠陥ではなく、使い方で起きているということです。だからこそ、コードの置き方を変えるだけで減らせます。

離れて暮らす親の家にこたつがあるなら、帰省したときにコードの通り道を見てください。伝え方は高齢の親に防災を伝えるコツにまとめています。


低温やけどは44度で起きます

もう1つの事故が低温やけどです。こちらは火災と違い、熱い器具でなくても起こります。

44度で3〜4時間、46度で30分〜1時間、50度で2〜3分

NITEはこの目安を示しています。44度は「温かくて心地よい」と感じる程度の温度です。それでも3〜4時間触れ続けると、低温やけどになります。

しかも、血流が圧迫されているとより短い時間で起こります。体の重みで器具を押さえつけた状態が、いちばん条件が悪いということです。

自覚症状がないまま進むことがあります

普通のやけどは皮膚の表層で起こりますが、低温やけどは皮膚の深部まで及びます。赤くはれる、水ぶくれができる、皮下組織が壊れる、といった症状が出て、重傷に至ることがあります。

そしてNITEは、健康な人でも自覚症状を伴わないで発症する場合があると書いています。痛くないから大丈夫、とは言えません。

特に注意が必要な人

NITEが挙げているのは、高齢の方、幼児、身体の不自由な方、糖尿病の方です。知覚障害や神経障害があると気づきにくくなります。また、泥酔や睡眠薬の服用で熟睡しているときも受傷しやすいとされています。

実際の事例に、電気あんかを「強」に設定して足に触れないよう置いていたものの、睡眠薬を服用していて熟睡し、目覚めたら両ふくらはぎの下にあんかがあって重傷を負った、というものがあります。

やけどを防ぐ使い方

NITEが挙げている対策はこうです。

  • 就寝前に温めておいて、寝るときはスイッチを切る
  • 切らない場合も、低い目盛りに下げる
  • 電気あんかは、タオルや湯たんぽカバーで包んでも低温やけどのおそれがある

3つめが重要です。「包んであるから安全」ではありません。


湯たんぽは電子レンジで破裂することがあります

ゆたんぽの事故としてNITEが挙げているのは、低温やけどのほかに、電子レンジ等による過剰な加熱での破裂です。

湯たんぽには、湯を入れる樹脂製・ゴム製・金属製のほか、電子レンジで中の蓄熱材を温める電子レンジ加熱式があります。方式ごとに加熱のしかたが違うので、電子レンジ対応かどうかと、加熱時間を取扱説明書で確認してください。対応していないものを温めると破裂します。


よくある質問

こたつで寝るのはなぜよくないのですか

NITEは、こたつで寝ると睡眠が浅くなるほか、体がだるくなる、脱水症状になる、ヒーターの熱で低温やけどを負うおそれがある、としています。火災の面でも、寝返りで布団がヒーターに寄っていくことに気づけません。

電気毛布をつけたまま寝てもいいですか

NITEは、就寝前に温めた後は低い目盛りに下げ、就寝時はスイッチを切ることをすすめています。つけたままにしないのが基本です。

コードを本体に巻いて収納していますが、だめですか

NITEは本体に巻き付けないよう明記しています。巻き付けたことで断線した事例が報告されています。片づけるときは、ゆるく輪にして、折り目がつかないようにしてください。

何年使ったら買い替えですか

NITEは経年劣化による事故を「10年をめど」として扱っています。明確な寿命が決まっているわけではありませんが、10年を超えたものは意識して点検してください。コードの付け根が硬くなっている、変色している、温まり方にムラがある、といった変化は使用をやめる理由になります。

低温やけどをしてしまったらどうすればいいですか

低温やけどは見た目より深いところまで傷んでいることがあり、重傷に至る例が報告されています。自己判断せず、医療機関を受診してください。

たこ足配線とは違う話ですか

違います。たこ足配線で問題になるのは合計の消費電力がタップの上限を超えることで、こちらはコンセントのほこりで火事になるにまとめています。この記事で扱っているのは、コードそのものの中の銅線が切れる話です。原因が別なので、対策も別に必要です。


今日1つだけやるなら、これ

こたつと電気カーペットのコードが、どこを通っているか見てください。

探すのは3か所です。家具の脚の下、こたつのやぐらの脚、そして人がまたぐ場所。ここを通っていたら、今日のうちに通り道を変えてください。

死亡・重傷事故がすべて使い方によるものだった以上、いちばん効くのはこれです。コードを買い替える必要はありません。置き方を変えるだけです。


今日のチェックリスト

  • こたつのコードが、やぐらの脚に固定されているか見た
  • 家具の脚でコードを踏んでいないか確認した
  • こたつ布団をやぐらに押し込んでいないか見た
  • 電気毛布は寝るときに切ると決めた
  • 電気あんか・湯たんぽを体に密着させていないか見直した
  • 10年以上使っている暖房器具がないか数えた
  • 収納のときコードを本体に巻かないと決めた

まとめ

こたつと電気カーペットの火災は、ほとんどがコードの半断線から起きます。家具の脚で踏む、やぐらに固定しない、収納時に本体へ巻き付ける。この3つをやめるだけで、入り口が1つ閉じます。

低温やけどは44度で3〜4時間。温かくて心地よい温度でも起こり、自覚症状がないまま進むことがあります。寝るときに切る、密着させない。ここが分かれ目です。

そして亡くなっているのは7割が60歳代以上でした。自分の家だけでなく、親の家のこたつも見てください。

事故が増えるのは11月からです。使い始める前の今が、コードの通り道を変えるタイミングです。


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