大雪のあと、ニュースで必ず流れる事故があります。雪下ろし中の転落です。
「屋根に登るから危ない」と思われがちですが、実際の事故はもっと手前で起きています。登る前、降りたあと、そして地上でも起きています。
どこで何が起きているのかを、順番に見ていきます。
屋根から落ちるだけではありません
雪下ろしに関わる事故は、大きく4つに分かれます。
- 屋根からの転落……いちばん多く、死亡につながりやすい
- はしごからの転落……登り降りの途中。屋根に乗る前に落ちています
- 屋根からの落雪に埋まる……下で作業していた人が巻き込まれます
- 除雪機に巻き込まれる……屋根に登らなくても起きます
「屋根に登らなければ安全」ではない、ということです。はしごの昇り降りと、屋根の下にいる人にも危険があります。
亡くなっているのは、ほとんどが高齢者です
国の集計では、雪による死者の大半が除雪作業中の事故で、そのうち多くを高齢者が占めています。
理由ははっきりしています。作業そのものが重労働だからです。雪は見た目より重く、湿った雪は1立方メートルで数百キロになります。これをスコップで動かし続けます。
そこへ、足場の悪さと寒さが重なります。バランスを崩したときに踏みとどまる力が、年齢とともに落ちていきます。
高齢の親御さんが「毎年やっているから大丈夫」と言う場合、その「毎年」が通用しなくなる年が来ます。
ひとりで登らないでください
これが最も大事な原則です。雪下ろしは、必ず2人以上で行ってください。
ひとりだと、落ちたときに誰も気づきません。雪の中では声も届きにくく、体温もすぐに奪われます。発見が遅れることが、そのまま命に関わります。
どうしても1人になる場合は、せめて次のことをしてください。
- 作業を始める前と終わったあとに、家族や近所へ連絡する
- スマホを体に付けて持つ(上着のポケットではなく、内側に)
- 近所の人に「今から屋根に上がる」と一声かけておく
命綱とヘルメットは、面倒でも着ける
転落事故の多くで、命綱もヘルメットも着けていません。
「すぐ終わるから」「今まで落ちたことがないから」。この2つが、いちばん多い理由です。
命綱は、屋根の反対側や丈夫な構造物に固定します。ヘルメットは、落ちたときだけでなく落雪から頭を守る役にも立ちます。
ヘルメットを選ぶときは、表示を見てください。「飛来・落下物用」と「墜落時保護用」の両方に対応しているものを選びます。前者だけだと、落ちたときの保護は想定されていません。
自転車用やヘルメット型の帽子では、この役割は果たせません。
これは国家検定を取得していて、両方の規格に対応しています。折りたためるので、使わない時期は防災用として置いておけます。地震のときの落下物にも使えるので、1つあって損はありません。
はしごは、立てかけただけでは動きます。上端を固定するか、誰かに下で押さえてもらってください。
晴れた日ほど、滑ります
意外に思われるかもしれませんが、作業しやすい晴れた日のほうが危険です。
気温が上がると、屋根と雪のあいだの接地面が溶けます。そこが滑り面になり、雪が板のようにまとめて滑り落ちます。その上に乗っていれば、一緒に落ちます。
軒先に近づかないこと。屋根の端から1メートルほどは残しておくくらいで十分です。
そもそも、登らない選択もあります
雪下ろしは、必ずしなければならない作業ではありません。建物が耐えられる量かどうかで判断します。
- 新しい住宅は、その地域の積雪量を想定して造られています
- 自治体によっては、高齢者世帯向けの除雪支援制度があります
- 費用はかかりますが、業者に頼むという選択があります
「お金がもったいない」と考える方は多いのですが、転落して入院すれば、それ以上の費用と時間がかかります。
屋根の下にいる人も危ない
雪下ろしをしている人だけでなく、その下にいる人が巻き込まれる事故も起きています。
屋根に積もった雪は、落ちるときに一度にまとまって落ちます。湿った雪は見た目よりはるかに重く、1立方メートルで数百キロになります。上から落ちてくれば、それだけで動けなくなります。
雪に埋まると、自力では出られなくなります。落ちた雪は衝撃で締まり、周りから押さえつけられる形になるためです。
作業の前に、下の状況を確認してください。
- 子どもが軒下で遊んでいないか
- 車やエアコンの室外機を軒下に置いていないか
- 玄関や勝手口の前に雪が落ちる向きになっていないか
玄関前に大量の雪が落ちると、家から出られなくなります。中に人がいる状態でこれが起きると、別の問題になります。
除雪機の事故も起きています
屋根に登らなくても、除雪機で毎年事故が起きています。
多いのは、雪が詰まったときに手で取り除こうとして巻き込まれる事故です。エンジンを止めても、詰まった雪が外れた瞬間に刃が回ることがあります。
詰まりを取るときは、必ずエンジンを切り、付属の棒を使ってください。手は入れないでください。
今日1つだけやるなら、これ
離れて暮らす親御さんに、「ひとりで屋根に登らないで」と電話してください。
道具を買うより、制度を調べるより、これが先です。本人は「大丈夫」と言うと思いますが、言われた記憶があるかどうかで、当日の判断が変わることがあります。
そのうえで、お住まいの自治体に除雪支援があるか調べてみてください。
今日のチェックリスト
- ひとりで作業しないと決めた
- 命綱とヘルメットがあるか確認した
- はしごの上端を固定できるか見た
- 自治体の除雪支援制度を調べた
- 除雪機の詰まりに手を入れないと知った
- 高齢の家族に伝えた
まとめ
雪下ろしの事故は、屋根の上だけで起きているわけではありません。はしご、落雪、除雪機。どれも毎年起きています。
原則は1つ、ひとりでやらないこと。そして、晴れて暖かい日ほど雪は滑ります。
そもそも登らなくて済む方法がないか、先に考えてみてください。
※数字や統計は年によって変わります。最新の情報は、消防庁や国土交通省、お住まいの自治体の発表をご確認ください。
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