防災士が解説|マンションの防災|水・トイレ・階段の3つが問題になります

マンションの防災。停電すると水も出ない、エレベーターは数日止まる、トイレは流さない、ベランダの仕切り板の前を空けることを示した図

マンションは地震に強い建物です。新しい建物なら、大きな揺れでも倒壊する可能性は低いと考えていいでしょう。

ただし「建物が無事」と「生活できる」は別の話です。マンションにはマンション特有の問題があり、それを知らないまま在宅避難を始めると行き詰まります。

この記事では、防災士の立場から、マンションで起きることと、その備えをまとめます。

停電すると、水も止まります

ここが、いちばん知られていない落とし穴です。

多くのマンションは、いったん受水槽にためた水をポンプで各階に送っています。つまり電気が止まればポンプが止まり、断水していなくても蛇口から水が出なくなります。

「水道は無事らしい」というニュースを聞いても、自分の部屋では出ない。これがマンションでよくある状況です。

逆に、受水槽に水が残っていれば、1階の非常用の蛇口から分けてもらえるマンションもあります。管理組合に確認しておくと安心です。

エレベーターは、必ず止まります

地震を感知すると、エレベーターは自動で最寄り階に停止します。そのあとは点検が終わるまで動きません。

問題は、点検業者が来るまでに時間がかかることです。同時に何千台も止まるので、復旧まで数日かかることもあります。

そうなると、生活のすべてが階段になります。

  • 水を運ぶ……2リットル6本で12キロ。給水車まで往復して、それを10階まで
  • ゴミを下ろす
  • 買い出し

だから高層階ほど、備蓄を多めに持ってください。水は1人1日3リットル×7日分が目安です。エレベーターに閉じ込められたときの対処も知っておいてください。

荷物を運ぶなら、キャリーカートやリュックがあると体がずいぶん楽です。

トイレは、絶対に流さない

マンションでいちばん重大なのが、これです。

地震で排水管が壊れていると、流した水が下の階の部屋にあふれます。自分の家は無事でも、階下に大きな被害を出してしまいます。

管理組合や管理会社から「流してよい」と確認が取れるまでは、水が出ても流さないでください。その間は携帯トイレです。1人1日5回、7日で35回が目安になります。

お風呂にためた水も、トイレを流すためではありません。手洗いや掃除に使ってください。

揺れたら、まず玄関を開ける

マンションの玄関ドアは頑丈ですが、それが逆に働くことがあります。建物がゆがむとドア枠も変形し、開かなくなるのです。

揺れを感じたら、身を守ったうえでできるだけ早くドアを開けて、何かをはさんでおく。これで閉じ込めを防げます。

近年の物件は「対震ドア枠」といって、変形しても開くようになっているものが増えています。ご自宅がどうかは、管理組合に聞けば分かります。

ベランダの前に、物を置かないでください

これも見落とされがちです。

ベランダには隣との間に薄い仕切り板(隔て板)があります。非常時はこれを蹴破って隣に逃げる設計です。そして下の階へ降りる避難ハッチがある部屋もあります。

ここに物置やプランターを置いていると、逃げられません。今日、ベランダを見てください。仕切り板の前と避難ハッチの上は、必ず空けておいてください。

高層階は、揺れ方が違います

高い建物ほど、ゆっくりと大きく、長く揺れます。船に乗っているような揺れが数分続くこともあります。

このとき起きるのが、家具やキャスター付きの家電が部屋の中を走るという現象です。倒れるだけでなく、移動します。

  • 背の高い家具は必ず固定する
  • キャスターはロックし、ストッパーを付ける
  • 寝室には倒れる物を置かない
  • 窓ガラスに飛散防止フィルムを

管理組合に聞いておきたいこと

マンションの防災力は、管理組合で決まります。次のことを一度確認しておいてください。

  • 共用部に防災備蓄はあるか……簡易トイレ、水、発電機など
  • 安否確認の方法は決まっているか……玄関に無事を示すマグネットを貼る方式が一般的です
  • 非常用電源はあるか……エレベーターや給水ポンプが動くか
  • 防災マニュアルはあるか

何もなければ、それを知っていること自体が備えになります。「うちは自分でそろえないといけない」と分かるからです。

今日1つだけやるなら、これ

ベランダの仕切り板の前に、物が置かれていないか見てください。

1分で終わります。そこが逃げ道だと知らずに、物置を置いている家庭はとても多いのです。

今日のチェックリスト

  • ☐ ベランダの仕切り板と避難ハッチの前を空けた
  • ☐ 停電すると水も出なくなると知った
  • ☐ 携帯トイレを7日分用意した
  • ☐ 揺れたら玄関を開けると決めた
  • ☐ 管理組合の備蓄と安否確認方法を確認した

まとめ

マンションは建物が丈夫なので、在宅避難が基本になります。だからこそ、水・トイレ・階段という3つの問題を先に想像しておいてください。

とくにトイレは、自分だけの問題では済みません。流さない、と決めておくことが、階下のご家庭を守ります。


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