防災士が解説|消防用設備の点検と報告は別物です|6か月・1年・3年の3つの周期

防火管理者の選任は入口の手続きです。そのあと毎年続くのが、消防用設備等の点検と報告です。

そして点検と報告は別の行為で、周期も違います。 ここを混同すると、点検はしているのに報告が出ていない、という状態が起きます。

報告しないと、30万円以下の罰金または拘留の対象になります。


結論:覚える数字は6か月・1年・3年です

消防法第17条の3の3に基づく制度で、周期は3つあります。

  • 機器点検……6か月に1回
  • 総合点検……1年に1回
  • 報告……特定防火対象物は1年に1回、非特定防火対象物は3年に1回

上の2つが「点検」、いちばん下が「報告」です。点検の周期と報告の周期は一致しません。

点検基準の根拠は昭和50年10月16日消防庁告示第14号、点検周期は平成16年5月31日消防庁告示第9号、報告は消防法施行規則第31条の6です。


点検と報告は、別の行為です

点検は、設備を見たり動かしたりすることです。報告は、その結果を消防署に出すことです。

ここでいちばん多い誤解が、「業者が点検に来たから終わり」です。

点検そのものは業者に委託できます。ですが報告は、防火対象物の関係者の義務です。業者が報告書の作成まで請け負っていることも多いのですが、実際に提出されたかどうかを確認する責任は、委託した側に残ります。

点検した日と、報告書を出した日。この2つは別々に記録してください。


機器点検と総合点検は、中身が違います

東京消防庁の説明では、2つはこう分かれています。

  • 機器点検……外観や簡易な操作で確認する点検。6か月に1回
  • 総合点検……消防設備を実際に作動させて、全般的な機能を確認する点検。1年に1回

機器点検は「ついているか、壊れていないか」を見るもの、総合点検は「本当に動くか」を確かめるものです。

周期が違うので、半年ごとに点検が入り、そのうち年1回は総合点検も行う形になります。業者の見積もりに「機器点検」「総合点検」と分けて書かれているのは、このためです。


報告は1年か3年か、用途で決まります

ここが防火管理者の選任とは違うところです。人数ではなく、建物の用途で分かれます。

  • 特定防火対象物……1年に1回(物品販売店舗、ホテル、病院、飲食店など、不特定多数の人が出入りする建物)
  • 非特定防火対象物……3年に1回(工場、事務所、共同住宅、学校、駐車場など)

3年に1回が、いちばん忘れられます

1年周期なら、毎年同じ時期に来るので習慣になります。問題は3年のほうです。

事務所、工場、共同住宅は3年周期です。3年あると、担当者が代わります。引き継ぎ書に「3年ごとに消防署へ報告」と書いていなければ、そこで途切れます。

前回いつ報告したかを、誰が見ても分かる場所に残してください。 これが3年周期の唯一の対策です。報告書の控えをファイルに綴じて、表紙に次回の年を書いておくだけで変わります。


自分で点検できる場合があります

点検は必ず業者に頼むもの、と思われがちですが、そうとは限りません。

東京消防庁によると、法令上、次のいずれにも該当しない場合は、有資格者以外も点検できます。

  • 延べ面積1,000平方メートル以上の建物
  • 地下または3階以上の階に特定用途(不特定多数が出入りする事業所等)があり、かつ屋内階段が1か所のみの建物
  • 二酸化炭素消火設備(全域放出方式)が設置されている建物

逆にいえば、このどれかに当てはまれば、消防設備士または消防設備点検資格者による点検が必要です。

また、消火器、非常警報器具、誘導標識、特定小規模施設用自動火災報知設備については、自分で点検・報告できるとされています。小さな店舗で消火器しか置いていない場合は、自分でできる可能性があります。

ただし東京消防庁は、有資格者による点検を推奨しています。できるかどうかと、やったほうがいいかは別の話です。


報告しないと、罰則があります

根拠は消防法第44条第11号です。

点検結果の報告をしなかった者、または虚偽の報告をした者は、30万円以下の罰金または拘留に処せられます。

さらに両罰規定があり、違反行為をした者のほか、監督責任を有する法人も30万円以下の罰金の対象になります。担当者個人の問題では終わらない、ということです。

報告先は、建物を管轄する消防署または出張所です。提出方法は窓口への持参、郵送、電子申請システムのいずれかとされています(東京消防庁の場合)。


防火管理者の選任とは、別の制度です

混同されやすいので整理しておきます。

  • 防火管理者の選任……収容人員で決まる(10人・30人・50人)。消防法第8条
  • 消防用設備等の点検報告……設置されている消防用設備等について行う。消防法第17条の3の3

判定のしかたが違うので、片方だけ該当することもあります。防火管理者の選任要件は防火管理者は何人から必要かにまとめました。

なお、よく似た名前で防火対象物点検(消防法第8条の2の2)という別の制度もあります。こちらは防火管理の体制そのものを点検するもので、消防用設備等の点検とは根拠条文から違います。


よくある質問

業者に頼んでいれば、報告もやってくれますか

点検の委託と、報告の義務は別です。報告書の作成・提出を代行してもらうことはできますが、義務は関係者側にあります。提出が済んだかどうかは、自分で確認してください。 控えを受け取っておくのが確実です。

消火器しか置いていなくても報告が要りますか

消火器は、自分で点検・報告できる設備として挙げられています。つまり報告の対象にはなり得ます。自分の建物が報告義務の対象かどうかは、所轄の消防署で確認してください。

3年周期だと必ず忘れます

そのとおりで、ここがこの制度の弱点です。前回の報告日を記録に残すしかありません。報告書の控えに次回の年を大きく書いておく、担当者の引き継ぎ書に項目として入れておく。この2つで大半は防げます。

点検で不良が見つかったらどうなりますか

改修が必要になります。報告書には不良箇所も記載することになっているので、隠しても意味がありません。虚偽の報告は罰則の対象です。

電子申請はできますか

東京消防庁では、窓口持参・郵送・電子申請システムのいずれかとされています。自治体によって運用が違うので、所轄の消防署で確認してください。

有資格者以外が点検した場合、書類は変わりますか

東京消防庁によると、有資格者以外が点検した場合は点検者一覧表を省略できるとされています。


今日1つだけやるなら、これ

前回、点検結果報告書をいつ出したかを確認してください。

控えがどこにあるか分からない、誰が出したか分からない。その状態なら、まず所轄の消防署に電話して、直近の報告がいつ受理されているかを聞くのが早いです。

特定用途なら1年、非特定用途なら3年。前回から何年経っているかが分かれば、今やるべきことが決まります。


今日のチェックリスト

  • 自分の建物が特定用途か非特定用途か確認した
  • 報告の周期が1年か3年かを把握した
  • 前回の報告日を確認した
  • 報告書の控えの保管場所を決めた
  • 次回の報告年を控えの表紙に書いた
  • 引き継ぎ書に点検報告の項目を入れた
  • 点検を委託している場合、報告まで含むか契約を確認した
  • 有資格者が必要な3条件に当てはまるか確認した

まとめ

消防用設備等の点検は機器点検が6か月に1回、総合点検が1年に1回。報告は特定防火対象物が1年に1回、非特定防火対象物が3年に1回です。点検と報告は別の行為で、周期も違います。

点検は業者に委託できますが、報告の義務は関係者に残ります。業者が来たから終わり、ではありません。

延べ面積1,000平方メートル以上、特定用途があって屋内階段が1か所のみ、二酸化炭素消火設備あり。このどれにも当てはまらなければ、有資格者以外でも点検できます。

報告しないと30万円以下の罰金または拘留で、法人にも両罰規定があります。

そして実務でいちばん落ちるのは、3年周期の非特定用途です。前回の報告日を、誰が見ても分かる場所に残してください。


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