「避難指示が出たら逃げる」と決めている方は多いと思います。ところが避難指示は、必ず出る情報ではありません。
市町村が判断して出すものなので、判断が間に合わないことも、対象の地区から自分の家が外れていることもあります。
では何を見て自分で決めるのか。その答えがキキクルです。気象庁が10分ごとに更新していて、自分の家の場所の危険度が色で分かります。
そして気象庁は、使い方をはっきり書いています。「黒」を待つことなく「紫」で避難の判断を。
結論:覚えるのは「紫」の1色だけです
キキクルの色は5段階です。
- 黒……災害切迫(警戒レベル5相当)
- 紫……危険(警戒レベル4相当)ここで避難
- 赤……警戒(警戒レベル3相当)
- 黄……注意(警戒レベル2相当)
- 白・水色……今後の情報等に留意
紫が、危険な場所から全員避難する色です。 警戒レベル4と同じ意味になります。
黒を目安にしてはいけません。気象庁の資料には、黒についてこう書かれています。災害がすでに発生している可能性が高い状況であること。そして災害が発生する前にいつも出現するとは限らないこと。
つまり黒は、間に合わなかったときに点く色です。待つ対象ではありません。
キキクルとは何か
正式には「大雨警報・洪水警報の危険度分布」といいます。2021年3月17日に愛称が決まりました。公募で1,271通の応募があり、「危機が来る」からキキクルになりました。
- 土砂キキクル……土砂災害の危険度
- 浸水キキクル……浸水害の危険度
- 洪水キキクル……洪水害の危険度
表示のしかたにも特徴があります。
- 1キロ四方の細かさで色分けされる(洪水キキクルは河川の流路に沿って色分け)
- 気象庁のホームページで10分ごとに更新される
- 色がちらつかないよう、過去30分間の最大危険度が表示される
見る場所は気象庁のキキクル(www.jma.go.jp/bosai/risk/)です。スマホでそのまま開けます。
警戒レベルとの違いが、いちばん大事です
警戒レベルについては警戒レベル1〜5の意味にまとめました。ただ、あの記事だけでは足りない部分があります。
警戒レベル3から5は、市町村が出します。 高齢者等避難、避難指示、緊急安全確保。これらは市町村の判断で、地区単位で発令されます。
キキクルは、気象庁が1キロ四方で出します。 誰かの判断を待つ必要がありません。
この違いが効いてくるのが次の場面です。
- 避難指示が出るのが遅れている
- 避難指示の対象地区に自分の家が入っていない
- 夜中で、市町村の判断が追いついていない
- そもそも緊急安全確保(レベル5)は、必ず発令される情報ではない
キキクルが紫になっていれば、避難指示を待たずに動いて構いません。 というより、それが本来の使い方です。
逆に、自治体から避難情報が出ているなら、キキクルの色がどうであれ、それに従ってください。いつ何をするかを先に決めておく方法はマイ・タイムラインの作り方にまとめました。
3つのキキクルは、先を読む時間が違います
ここは知っている人が少ない部分です。キキクルは今の雨量だけでなく、予測値でも色が変わります。そして予測の時間が災害ごとに違います。
- 土砂キキクル……2時間先までの予測
- 浸水キキクル……1時間先までの予測
- 洪水キキクル……3時間先までの予測
紫が予測で出るのは、気象庁の説明によると「防災機関や住民に伝わり避難が完了するまでに必要とされる時間を確保できるよう」にするためです。
だから雨が小康状態でも紫になることがあります。 外を見て「今は降っていないから大丈夫」と判断すると、この先読みの意味がなくなります。
色が決まる条件
- 黒……指数の実況値が大雨特別警報の指標に用いる基準に到達した場合
- 紫……指数の実況値または予測値が土砂災害警戒情報の基準等に到達する場合
- 赤……指数の実況値または予測値が警報基準に到達する場合
- 黄……指数の実況値または予測値が注意報基準に到達する場合
基準そのものは、過去30年分の災害データから設定されています。感覚ではなく実績からの線引きです。
ハザードマップと重ねてください
キキクルは「いま危険度が高まっている場所」を示します。ハザードマップは「もともと危ない場所」を示します。この2つが重なったところが、逃げるべき場所です。
気象庁のキキクルには重ね合わせのボタンがあり、土砂災害警戒区域や洪水浸水想定区域を上に表示できます。
自宅の災害リスクそのものはハザードマップの見方で先に確認しておいてください。平時にやる作業です。雨の降っている最中に初めて開くものではありません。
見に行かなくても届くようにする
キキクルの弱点は、自分で見に行かないと分からないことです。寝ている間に紫になっても気づきません。
これを解決するのが通知サービスです。登録した地域のどこかでキキクルの「危険」(紫)が出現したときなどに、プッシュ通知が届きます。
気象庁の協力のもと、民間の5事業者(アールシーソリューション、ゲヒルン、島津ビジネスシステムズ、日本気象、ヤフー)が実施しています。
スマホ側の設定もあわせて見直してください。スマホの防災設定5つにまとめています。
紫を見たとき、どこへ逃げるか
崖のそばにいる場合
崖崩れの影響が及ぶのは、急傾斜地の高さの2倍以内(ただし50メートルを超える場合は50メートル)とされています。
高さ10メートルの斜面なら20メートル以内です。家が斜面に近いなら、斜面から遠い部屋、できれば2階以上へ移動してください。
土砂災害は発生してからでは避難できません。崖崩れも土石流も一瞬です。
中小河川のそばにいる場合
山間部を流れる中小河川は、流域が狭いため雨が川に集まるまでの時間が短く、短時間で急激に水位が上がります。
気象庁の資料には、平成29年7月5日の例が載っています。わずか1時間で急激に増水した記録です。
大きな川のイメージで「まだ余裕がある」と考えないでください。浸水そのものへの備えは賃貸でもできる浸水対策にまとめています。
よくある質問
避難指示が出ていないのに逃げていいのですか
問題ありません。キキクルの紫は警戒レベル4相当です。避難指示は必ず出る情報ではないので、自分で判断する材料として作られたのがキキクルです。
黒になるまで待つのは本当にだめですか
だめです。気象庁自身が「黒を待つことなく紫で避難の判断を」と資料に書いています。黒は災害がすでに発生している可能性が高い状況で、しかも災害の前に必ず出るとは限りません。
雨がやんだのに紫のままです
土砂キキクルは2時間先までの予測を使います。また土壌にたまった水の量で判断するので、雨がやんでも危険度はすぐには下がりません。色が下がるまで動かないでください。
色が急に変わらないのはなぜですか
過去30分間の最大危険度を表示する仕組みだからです。危険度が頻繁に変化して判断に迷うことを防ぐためで、故障ではありません。
洪水キキクルだけ表示が線なのはなぜですか
洪水は川沿いで起きるので、河川の流路に沿って色分けされます。土砂と浸水は1キロ四方のマス目です。
3つのうちどれを見ればいいですか
自宅の地形で決めてください。斜面が近ければ土砂、低い土地なら浸水、川が近ければ洪水です。分からなければ3つとも見てください。切り替えはボタン1つです。
今日1つだけやるなら、これ
気象庁のキキクルを開いて、自宅をブックマークしてください。
雨が降ってから探すと、地図を動かして自宅を探すところから始まります。その数分が惜しくなる場面があります。
そのうえで、通知サービスのアプリを1つ入れてください。寝ている間の紫に気づけるのは、これだけです。台風が近づいているなら台風が来る前日にやることリストも合わせて使えます。
今日のチェックリスト
- 気象庁のキキクルを開いて自宅を表示した
- そのページをブックマークまたはホーム画面に追加した
- 土砂・浸水・洪水の3つを切り替えてみた
- ハザードマップの重ね合わせを試した
- 通知サービスのアプリを1つ入れた
- 紫が警戒レベル4相当だと家族に伝えた
- 黒を待たないと決めた
- 避難先と、そこまでのルートを決めた
まとめ
キキクルは大雨・洪水警報の危険度分布の愛称で、土砂・浸水・洪水の3種類があります。1キロ四方の細かさで、10分ごとに更新されます。
色は5段階。紫が警戒レベル4相当で、ここが避難のタイミングです。黒は災害がすでに起きている可能性が高い状況で、しかも必ず出るとは限りません。
警戒レベル3から5は市町村が地区単位で出しますが、キキクルは気象庁が1キロ四方で出します。避難指示を待たずに判断できる、というのがキキクルの意味です。
予測の先読みは土砂が2時間、浸水が1時間、洪水が3時間。雨が弱まっても色が下がらないのは、そういう仕組みだからです。
やることは2つだけです。自宅のキキクルをブックマークする。通知アプリを1つ入れる。どちらも今日のうちに終わります。

