停電が3時間続いた。冷蔵庫の中の肉は、食べていいのか。
この判断に、はっきりした目安があることはあまり知られていません。農林水産省が時間の数字を出しています。
停電の備えというと明かりや充電の話が中心になりますが(それは停電したときの備えの記事にまとめています)、実際に停電が終わったあとに残る問題は、たいてい冷蔵庫です。捨てるか食べるかを、根拠なく決めることになります。
結論:冷蔵庫は約4時間、冷凍庫は約1〜2日
農林水産省の案内では、こう書かれています。
- 低温が保持できる時間(扉を開けない場合)は、冷蔵庫で約4時間
- 冷凍庫で約1〜2日間
ただしこれは目安で、気温や庫内の食品の量によって変わります。真夏の停電なら短くなりますし、冷凍庫がぎっしり詰まっていれば長くもちます。
つまり4時間というのは上限ではなく、条件がよければそこまでもつという数字です。夏の昼間に停電したなら、短く見積もっておくほうが安全側に倒せます。
「扉を開けなければ」が条件です
この4時間という数字には前提があります。開けないことです。
1回開けるたびに冷気が逃げ、代わりに室温の空気が入ります。停電中は冷やし直す力がないので、一度上がった温度は戻りません。中を確認するために何度も開けると、4時間もたないうちに目安を割ります。
農林水産省も「電気が復旧するまで、冷蔵庫の開閉は最小限にしましょう」と書いています。確認したい気持ちは分かりますが、開けて確認した時点で寿命を削っています。
停電が起きたら、まず冷蔵庫から必要なものを一度に出して、それ以降は開けない。これがいちばん効きます。
目安を超えたら、どうするか
時間を超えた食品の扱いについても、農林水産省ははっきり書いています。
- 傷みやすい肉・魚・惣菜などは、目安時間を超えたら廃棄する
- 要冷蔵・要冷凍の食品で、保存温度が適正に保てなかったものは、食べずに処分する
「見た目もにおいも問題ないから大丈夫」と考えがちですが、食中毒を起こす菌は見た目を変えません。においも出ないことがあります。五感で判断できないというのが、この問題のいちばん厄介なところです。
だから基準は「傷んでいそうか」ではなく、「何時間、適正な温度を保てなかったか」です。時間で切るほうが確実です。
停電したら、時刻を1つメモしておいてください。スマホのメモでも紙でも構いません。あとになると「何時に止まったか」が意外と思い出せず、判断できなくなります。
溶けた冷凍食品を、もう一度凍らせてはいけません
これも明記されています。完全に溶けた冷凍食品を再び凍らせるのは避ける、です。
電気が戻ったとき、溶けかけた物を冷凍庫に戻したくなります。見た目は元に戻りますが、溶けているあいだに菌が増えています。もう一度凍らせても菌は死にません。凍って止まるだけで、次に解凍したときに続きから増えます。
まだ氷が残っていて冷たいうちなら、早めに加熱して食べきるほうが無駄になりません。完全に溶けてぬるくなっていたら、再冷凍ではなく処分です。
判断に使えるのは「氷が残っているか」です。袋の中にまだ氷の粒があり、触って冷たければ、まだ低温が保たれていた可能性が高い。やわらかくなって常温に近ければ、時間が経っています。
迷ったときの考え方
ここまでの話をひとことにすると、こうなります。
迷ったら、食べない。
停電のあとは片付けも買い物も大変で、食べ物を捨てるのは心理的にこたえます。ただ、災害のあとに食中毒になると、病院も薬局も通常どおりには動いていません。下痢や嘔吐は脱水につながり、断水していれば水分の確保も難しい。平時なら軽くすむことが、災害時には重くなります。
数百円の食材と、数日動けなくなるリスクを比べてください。
停電が長引きそうなときにできること
開けないのが基本ですが、長引きそうなら手はあります。
- 最初の1回で、その日に食べる分をまとめて出す(何度も開けない)
- 傷みやすいものから先に食べる(肉・魚・乳製品・惣菜)
- 冷凍庫の中身を詰める(すき間が少ないほど温度が上がりにくい)
- 保冷剤や凍ったものを、冷蔵室に移す
- クーラーボックスがあれば、傷みやすいものだけ移す
「冷凍庫を詰める」は、ふだんからできる備えでもあります。すき間に水を入れたペットボトルを凍らせて入れておくと、停電時は保冷剤になり、溶ければ飲み水にもなります。
逆に冷蔵室は詰めすぎないほうが普段の効率はよいのですが、停電に限れば中身が多いほうが温度は上がりにくくなります。普段の使い方を変える必要はありません。停電したときに冷凍庫から冷蔵室へ移す、と覚えておけば十分です。
よくある質問
停電は何時間くらいで復旧しますか
状況によって大きく変わるので、時間を当てにしないでください。台風や落雷なら数時間で戻ることもありますが、地震で設備が壊れていれば数日かかります。冬の停電は暖房も止まるので別の問題が出ます(冬に停電したら)。冷蔵庫の判断は「復旧予想」ではなく「止まってからの経過時間」で行ってください。
停電中に冷蔵庫の電源プラグは抜くべきですか
停電が復旧したときの電圧変動が心配な場合は、抜いておく考え方があります。ただし抜いた場合は、復旧後に戻すのを忘れないでください。戻し忘れて「復旧したのに冷えない」という事態が起きます。
ドアの開け閉めを何回までならいいですか
回数の基準は示されていません。示されているのは「最小限に」だけです。回数で考えるより、1回で済ませる段取りを考えるほうが現実的です。
牛乳や卵は、どのくらいで危なくなりますか
個別の食品ごとの時間は示されていません。示されているのは「要冷蔵の食品で保存温度が適正に保てなかったものは食べずに処分する」という基準です。牛乳や卵は要冷蔵なので、冷蔵庫の目安である約4時間を超えたら、この基準で判断してください。
浸水した食品はどうすればいいですか
浸水した水には汚水や泥、細菌が含まれています。冷蔵・冷凍が必要な食品、生で食べる野菜や果物、調理済みの食品は、浸水したら食べずに処分してください。容器が変形・膨張・破損した缶詰やレトルトも同じです。浸水と停電が重なったときに何が起きるかは別記事にまとめています。
今日1つだけやるなら、これ
水を入れたペットボトルを1本、冷凍庫のすき間に入れてください。
すき間が減って庫内の温度が上がりにくくなり、停電したらそのまま保冷剤になります。溶ければ飲み水です。費用はゼロで、今すぐできます。水そのものの備蓄量は備蓄は何日分必要かの記事を見てください。
今日のチェックリスト
- 冷蔵庫は約4時間、冷凍庫は約1〜2日が目安だと知っている
- 停電したら開けないことが前提だと知っている
- 目安を超えた肉・魚・惣菜は捨てると決めている
- 完全に溶けた冷凍食品は再冷凍しないと知っている
- 冷凍庫のすき間に凍らせたペットボトルが入っている
- クーラーボックスか大きめの保冷バッグが家にある
まとめ
- 扉を開けなければ、冷蔵庫は約4時間・冷凍庫は約1〜2日(農林水産省)
- 気温や食品の量で変わる目安なので、長めには見積もらない
- 目安を超えた傷みやすい食品は廃棄する
- 完全に溶けた冷凍食品は再び凍らせない
- 見た目とにおいでは判断できない。時間で判断する
停電のときに本当に困るのは、明かりでも充電でもなく「これは食べていいのか」が分からないことです。4時間という数字を知っているだけで、迷う時間がなくなります。
次に読むべき記事
- 停電したときの備え|明かり・充電・情報の3つ:停電そのものへの備え
- ポータブル電源は必要?停電の不安が消える理由と選び方:長い停電に備えるなら
- 停電と浸水が同時に起きたときに本当に困ること:重なったときの話
ライフラインが止まったあとの記事
ガス・電気・水道が止まったあと、何をどう判断するかをまとめています。
- 地震でガスが止まったら自分で戻せます|復帰ボタンと3分:ガスの復帰のしかた
- 断水が復旧したら、すぐ飲んでいい?|白い濁りと赤い濁りの違い:復旧直後の水の扱い
- 給水所に行くとき何を持っていく?|ポリタンクでは運べません:水をもらいに行くとき

