揚げ物をしていて、少し目を離した。戻ったら、鍋から火が上がっている。
このとき何をするかで、結果が大きく変わります。そしてやってはいけないことを、やってしまいやすい場面でもあります。
結論:水はかけない。マヨネーズも勧められません
先に答えを書きます。
- 水をかけるのは「大変危険」(消防庁消防大学校 消防研究センター)
- マヨネーズでの消火も勧められない(同センター)
どちらもネットでよく見る方法ですが、公的機関は明確に否定しています。理由はこのあと書きます。
数字で見ると、こんろは出火原因の3位
まず、どれくらい起きているのかを見ておきます。
- 令和3年中の総出火件数は35,222件
- 出火原因は1位たばこ3,042件、2位たき火2,764件、3位こんろ2,678件(全火災の7.6%)
- こんろ火災のうちガスこんろが2,247件
- そして最も多い原因が「消し忘れ」で1,154件
出典:総務省消防庁|令和4年版 消防白書(令和3年中の出火原因)
👉 注目したいのはこんろ火災の約4割が「消し忘れ」だという点です。壊れたからでも、古かったからでもありません。
なぜ水をかけてはいけないのか
消防研究センターの説明が、いちばん分かりやすいです。
👉 「水は100℃で沸騰(1気圧)しますから、高温の油に投入された水は一気に水蒸気となり、周辺に高温の油をまき散らす」(消防庁消防大学校 消防研究センター)
火災になっている鍋の油は300℃を大きく超えています。そこに水が入ると、水は一瞬で沸騰して体積が爆発的に増えます。その勢いで、燃えている油が周囲に飛び散ります。
⚠️ コップ1杯の水でも起きます。「少しだけなら」と考えないでください。
マヨネーズで消えるという話について
「マヨネーズを入れると消える」という方法が知られています。これについて消防研究センターは、こう結論しています。
👉 「消えることもあるが、条件によってはより危険になる場合がある」のでお勧めできない
危険とされる理由は3つ挙げられています。
- マヨネーズに含まれる水分で、高温の油が飛散するおそれがある
- マヨネーズも油なので、燃えている油に可燃物を注ぐことになる
- 油が容器からあふれ出すと、周辺に火災が拡大するおそれがある
👉 「うまくいった」という話があるのは事実です。でも条件次第で悪化する方法を、火が出ている場面で試す理由はありません。
そもそも、なぜ油に火がつくのか
温度の話をすると、仕組みが分かります。
- 天ぷらを揚げているときの油温は約180℃(消防研究センター)
- 市販の植物油の発火温度は約370℃(NITE)
揚げ物の温度と発火する温度の間には、約190℃の差があります。ただし火にかけ続ければ、油の温度は上がり続けます。
👉 NITEは「調理油過熱防止装置のないこんろに天ぷら鍋を火にかけたまま放置」した結果、発火温度を超えて自然発火する状況を再現しています(NITE 製品安全センター)。
種火を近づけなくても、放置しているだけで燃えます。これが「消し忘れ」が最多の原因である理由です。
では、燃えたらどうするか
順番が大事です。
- 火を止める…こんろのスイッチを切る。可能ならガスの元栓も閉める
- 消火器を使う…てんぷら油火災に対応したもので、火元に向けて
- 無理なら離れて119番…天井に火が届いたら、消火はあきらめて避難する
👉 住宅用消火器は、普通火災だけでなくてんぷら油火災にも対応しています(東京消防庁)。キッチンから手が届く場所に1本置いてください。
消火用具の種類と選び方は、こちらにまとめました。
→ 消火器の代わりにスプレー・投てき型でいい?3種類の違い
台所に置くなら、スプレータイプも補助になります。ただし缶に書かれている適応火災の表示を必ず確認してください。てんぷら油に対応していないものもあります。
【1本】 消火スプレー エアゾール式簡易消火具 キッチン消火スプレー 消火器 消化器 火消し
調理油過熱防止装置がついているか、確認してください
最近のこんろには、鍋底の温度を見て自動で火を弱めたり止めたりする調理油過熱防止装置が付いています(NITE)。
ただ、気をつけたい点があります。
- 古いこんろには付いていないことがある
- カセットコンロや卓上の調理器具には付いていないものが多い
- 付いていても、装置を信用して離れていいわけではない
👉 NITEの注意事項はシンプルです。「揚げ物調理中はその場を離れないでください。離れるときは必ずスイッチを切ってください」
よくある質問
鍋のフタをかぶせれば消えますか
酸素を断つという考え方自体は理にかなっていますが、火が上がっている鍋に近づく動作そのものが危険です。フタをずらした瞬間に炎が吹き上がることもあります。消火器が手元にあるなら、そちらを使ってください。
濡れたタオルをかぶせる方法はどうですか
濡れているということは水分があるということです。高温の油に水が触れると飛散するという、水をかけたときと同じ危険があります。公的機関が推奨している方法ではありません。
火が小さいうちなら自分で消していいですか
判断の目安は炎が天井に届いているかどうかです。届いていたら消火はあきらめて、避難と119番を優先してください。消火器を1本使い切っても消えないときも同じです。
IHクッキングヒーターなら安心ですか
IHでも油は加熱されるので、放置すれば発火温度に達します。炎が出ない分だけ油断しやすいという面もあります。「その場を離れない」は、ガスでもIHでも同じです。
今日1つだけやるなら、これ
キッチンに立って、周りを見てください。
消火器か、消火スプレーに手が届きますか。
👉 届かないなら、1本置く場所を決めてください。こんろの真横ではなく、こんろから少し離れた、逃げる方向です。火が出ている場所に取りに行くことになっては意味がありません。
今日のチェックリスト
- ☐ 揚げ物中にその場を離れていない
- ☐ こんろに調理油過熱防止装置が付いているか確認した
- ☐ キッチンから手の届く場所に消火用具がある
- ☐ その消火用具がてんぷら油火災に対応している
- ☐ 水とマヨネーズは使わないと家族に伝えた
まとめ
- こんろは出火原因の3位(2,678件)で、最多の原因は消し忘れ(1,154件)
- 水は大変危険。一気に水蒸気になって高温の油をまき散らす
- マヨネーズも勧められない。条件によってはより危険になる
- 油は放置しているだけで約370℃に達して自然発火する
- 燃えたら火を止める→消火器→無理なら避難と119番
- 住宅用消火器はてんぷら油火災にも対応している
揚げ物をやめる必要はありません。その場を離れないことと、消火器を1本置くこと。この2つだけです。
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