防災士が解説|帰宅困難になったら|歩いて帰る前に知っておくこと

帰宅困難時はまず3日間動かないのが原則。歩く速さは時速3〜4キロで20キロなら6時間超かかることを示した図

平日の昼間に大きな地震が起きたら、あなたはどこにいるでしょうか。

多くの方は職場や学校、外出先です。そして電車が止まります。そのとき、ほとんどの人が同じことを考えます。「歩いてでも家に帰ろう」

その気持ちは当然です。でも、防災士としてお伝えしたいのは「すぐに歩き出さないでください」ということです。理由と、それでも歩くときの備えをまとめます。

原則は「3日間、動かない」

国や自治体が呼びかけているのは、「むやみに移動を開始しない」という一点です。都市部では、条例で事業者に従業員を待機させるよう求めているところもあります。

なぜ、そこまで言うのか。理由は3つあります。

  • 救助の車が通れなくなる……歩く人で道路があふれると、救急車も消防車も動けません。助かるはずの人が助かりません
  • 歩く人自身が危ない……余震で看板やガラスが落ちてきます。ブロック塀も倒れます
  • 群衆事故のおそれ……人が密集した場所で将棋倒しが起きることがあります

3日というのは、救助活動が一段落し、道路の状況が分かってくるまでの目安です。その間、職場にとどまるほうが安全だということです。

歩くと、実際どれくらいかかるのか

ここを具体的に知っておくと、判断が変わります。

ふだんの歩く速さは時速4キロほどです。ところが災害時は、人が多く、道も荒れているため時速2〜3キロまで落ちると言われます。

  • 10キロ……4時間前後
  • 20キロ……8時間前後
  • 30キロ……半日以上。一般に歩いて帰るのは困難とされる距離です

しかもこれは、平坦な道を、休まず、健康な人が歩いた場合です。実際には荷物があり、革靴で、途中でトイレにも行きたくなります。夜になれば街灯も消えています。

まず、自宅から職場まで何キロあるかを調べてください。これを知らないまま「歩いて帰れる」と思い込んでいる方が、とても多いのです。

頼れる場所があります

一時滞在施設

帰宅できない人が一時的に過ごせるよう、自治体が確保している施設です。公共施設やオフィスビル、大学などが指定されています。

これは避難所とは別物です。避難所は家を失った人のための場所で、帰宅困難者は一時滞在施設へ、という役割分担になっています。

災害時帰宅支援ステーション

これは知っておくと心強い仕組みです。コンビニ、ガソリンスタンド、ファミリーレストランなどが自治体と協定を結び、歩いて帰る人を支援してくれます。

  • 水道水の提供
  • トイレの使用
  • 道路情報の提供
  • 休憩場所の提供

ステッカーが貼られているので、店舗の入口を見てください。ただし物資が無限にあるわけではありません。お店も被災しています。頼りきりにはしないでください。

それでも歩くなら

小さなお子さんがいる、介護が必要な家族がいる。どうしても帰らなければならない事情もあります。その場合の注意点です。

  • 明るいうちに動く……暗くなってからの移動は危険です。夜は無理をせず、どこかにとどまる
  • 幹線道路を使う……広い道のほうが、落下物や倒壊の危険が少なくて済みます
  • 川沿いと地下道は避ける
  • 1〜2時間ごとに休む……止まらずに歩き続けると、あとで動けなくなります
  • 家族に「今から歩く」と伝える……途中で連絡が取れなくなることを前提に

連絡の手段は安否確認の方法スマホの防災設定にまとめています。位置情報の共有をしておくと、連絡がつかなくても動きが分かります。

会社や外出先に置いておくもの

帰宅困難は「備えがあるかどうか」で、つらさがまるで変わります。

  • 歩ける靴……これが最優先です。革靴やパンプスでは数キロで靴ずれになります
  • モバイルバッテリー……充電しておく
  • 水と、少しの食べ物
  • 現金(小銭を多めに)……停電すると電子決済もATMも止まります
  • 雨具……傘ではなく、両手が空くレインコート
  • 携帯トイレ……道中のトイレは行列になります
  • 紙の地図か、印刷した帰宅ルート……スマホの電池は切れます

職場での備えは会社で地震が起きたらにも書きました。

子どもの学校は、どうなるのか

帰宅を焦る最大の理由が、これだと思います。

安心してください。学校は、子どもを勝手に帰しません。保護者が引き取りに来るまで学校で預かるのが原則です。連絡がつかなくても、置き去りにされることはありません。

これを知っているかどうかで、親の判断がまったく変わります。詳しくは子どもが学校にいるとき地震が起きたらをどうぞ。

今日1つだけやるなら、これ

職場から自宅まで、何キロあるか調べてください。

地図アプリで徒歩ルートを出せば1分です。20キロを超えていたら、「歩いて帰る」は現実的な選択肢ではない、と分かります。それが分かっているだけで、当日の判断が変わります。

今日のチェックリスト

  • ☐ 職場から自宅までの距離を調べた
  • ☐ 歩ける靴を職場に置いた
  • ☐ すぐに歩き出さないと決めた
  • ☐ 家族と連絡方法を決めてある
  • ☐ 子どもは学校で預かってもらえると知った

まとめ

帰宅困難で大事なのは、すぐに歩き出さないことです。3日間とどまれる備えと、家族が無事だと信じられる約束。この2つがあれば、慌てて危険な道に出なくて済みます。

今日は、家までの距離を調べるだけで十分です。


次に読むべき記事

「職場での備えと、むやみに帰らない理由です」
会社で地震が起きたら|机の下に靴を1足

「子どもが学校にいるときの動き方です」
子どもが学校にいるとき地震が起きたら

「連絡が取れないときの手段です」
災害時に家族と連絡が取れないとき|安否確認の方法

「外出先で揺れたときの動き方です」
外出先で地震にあったらどうする?備えておくこと

「ビルで閉じ込められたときはこちらです」
エレベーターで地震が起きたら|まず全部の階を押す

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防災、何から始める?目的別の記事まとめ

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