防災士が解説|放火は「疑い」を足すと最多です|3,904件で全火災の10.5%

このブログの火事の記事は、こんろ、ストーブ、たばこ、コンセント、こたつ、給油と書いてきました。全部「自分が火を出さない」話です。

放火だけが違います。相手は他人で、家の中をいくら整えても外から来ます。

そして件数が小さくありません。令和6年の放火は2,377件で出火原因の4位ですが、「放火の疑い」を合わせると3,904件、全火災の10.5%になり、1位のたばこを上回ります。


結論:「疑い」を足すと最多になります

消防庁の令和7年版消防白書から、令和6年中の数字です。総出火件数は37,141件でした。

  • たばこ 3,058件(全火災の8.2%・1位)
  • たき火 2,781件(2位)
  • こんろ 2,718件(7.3%・3位)
  • 放火 2,377件(6.4%・前年比4.7%減)
  • 放火+放火の疑い 3,904件(10.5%・前年比5.0%減)

白書は「放火」と「放火の疑い」を分けて集計しています。放火だけなら4位ですが、合計した3,904件はたばこの3,058件より多く、割合でも10.5%と8.2%で上回ります。

なお、放火・放火の疑いの発火源はライターが1,090件で最も多くなっています。特別な道具は要らない、ということです。

件数自体は前年より減っています。ただ10件に1件という水準は、無視できる大きさではありません。


放火だけ、対策の種類が違います

こんろの火災は火を消せば防げます。ストーブは物を離せばいい。たばこは吸い殻を確実に消す。どれも自分の行動で止められます。

放火は止められません。やるのは他人です。

だから対策は「しないようにする」ではなく、「されない環境をつくる」になります。消防庁もその言い方をしています。

東京消防庁は、放火火災は人目がない場所や街灯のない暗い場所で、人の活動が少なくなる深夜の時間帯に多く発生している、としています。狙われる条件がはっきりしているので、そこを外すという考え方です。


消防庁のチェックリストは26項目あります

消防庁の「放火火災防止対策戦略プラン」別冊(平成16年12月・放火火災防止対策検討会)に、個人用の評価シートが載っています。

26の質問に答えて点数を出し、5つの中項目ごとに自己評価する形式です。

  • 環境要因
  • 敷地・建物への侵入防止
  • 可燃物等の整理
  • 火災の初期対応
  • 家族や近隣との協力体制

面白いのは、質問ごとに配点が違うことです。点数を見ると、消防庁が何を重く見ているかが分かります。

配点の高い項目

  • 25点 建物前面の道路に街路灯が設置されている
  • 24点 建物のまわりや共用の廊下・階段に、新聞や雑誌等の燃えやすいものを置いていない
  • 24点 消火器等の使用方法を、自分を含め家族みんなが知っている
  • 23点 近隣者と放火火災防止の取り組みについて話し合ったことがある
  • 21点 ごみは回収日の決められた時間帯に出している
  • 21点 火災発生時の119番通報について、家族や近隣と話し合ったことがある
  • 21点 家庭内に消火器等を設置している
  • 20点 深夜でも玄関灯や門灯をつけている
  • 20点 郵便受けの新聞等は早めに取り込んでいる
  • 20点 隣近所と気軽に声を掛け合っている

配点の低い項目

  • 17点 住宅用火災警報器を設置している
  • 17点 付近に監視カメラ等の放火火災対策機器が設置されている
  • 13点 敷地内に他人が簡単に入りにくくなっている
  • 12点 侵入監視センサー、熱線センサー付き照明器具のいずれかを設置している

機械より、片づけと近所づきあいです

ここが読みどころです。

侵入監視センサーが12点、監視カメラが17点。一方で、燃えやすいものを置かないが24点、近隣者と話し合ったことがあるが23点。

買って取り付けるものより、やめることと話すことのほうが高く配点されています。センサーを付ける前に、外に置いてあるものを片づけて、隣の人と挨拶するほうが効く。消防庁の採点はそう言っています。

なおこの資料は平成16年のものです。ただ消防庁が現在も公開しており、ごみ・施錠・照明・整理整頓という骨格は、東京消防庁が今出している呼びかけとも一致しています。件数は令和6年の最新を使いました。


今日から変えられる3つ

ごみを前の晩に出さない(21点)

「ごみは回収日の決められた時間帯に出す」が21点です。

対策集には「ごみの回収日を把握しておく」「ごみ回収のルールを徹底する」と書かれています。前の晩に出したごみは、人の活動が少ない深夜のあいだ、ずっと道路に置かれていることになります。

置きっぱなしをやめる(24点)

最高点に近い項目です。建物のまわり、共用の廊下や階段に、新聞や雑誌などの燃えやすいものを置かない。

関連する項目も並んでいます。

  • 20点 郵便受けの新聞等は早めに取り込む
  • 18点 車両等のボディカバーは防炎製品を使用する(車を使っていない場合も満点)
  • 17点 自転車・バイクのカゴ等に燃えやすいものを放置しない

対策集には「可燃物は部外者の目に届かない場所に整理整頓する」とあります。見えないところに移すだけでも違う、ということです。

夜に鍵をかけて、明かりをつける(19点・18点・20点)

  • 19点 門扉には夜間鍵をかけている
  • 18点 道路に面した車庫や物置には夜間鍵をかけている(そもそも無い場合も満点)
  • 20点 深夜でも玄関灯や門灯をつけている

東京消防庁も「夜間は車庫や物置などに鍵をかけるなどの対策をしましょう」としています。門灯の終夜点灯は電気代がかかりますが、LEDなら負担は小さく済みます。


長期に家を空けるとき

留守は狙われる条件がそろいます。評価シートにも項目があります。

  • 18点 長期に留守する際、新聞配達を止める、室内の照明を点灯させておく等を心がけている
  • 16点 特に宿泊するような外出時には、隣近所へ声をかけている

対策集にはもう1つ、「郵便受けから新聞やチラシがはみ出さないよう、業者に依頼する」とあります。はみ出した新聞は、留守の合図であり、同時に着火物でもあります。

隣近所への声かけが点数になっているのは、留守を知っている人がいれば異変に気づけるからです。


火が出てからのことも、点数に入っています

26項目のうち、「火災の初期対応」の中項目にはこの4つが入っています。

  • 24点 消火器等の使用方法を家族みんなが知っている
  • 21点 家庭内に消火器等を設置している
  • 21点 119番通報について家族や近隣と話し合ったことがある
  • 17点 住宅用火災警報器を設置している

置いてあるか(21点)より、使い方を知っているか(24点)のほうが高いのが特徴です。消火器の種類と限界は消火器の代わりにスプレー・投てき型でいい?に、警報器の疑問は住宅用火災警報器のよくある疑問にまとめています。

そして火が出たあとの動き方は火事のとき、タオルは濡らさなくていいに書きました。


よくある質問

マンションでも関係ありますか

あります。配点24点の項目に「共用の廊下・階段」が明記されています。自分の玄関前に置いた段ボールや新聞は、他人が通る場所にある可燃物です。

センサーライトを付ければ安心ですか

評価シートでは12点で、26項目の中では低いほうです。付けて無駄ということではありませんが、先にやることがあります。外に置いてあるものを片づける(24点)ほうが配点は倍です。

放火は増えていますか

令和6年は前年より減っています。放火が4.7%減、放火の疑いを含めた合計が5.0%減です。ただし合計3,904件は、全火災の10.5%にあたります。

何で火をつけられるのですか

放火・放火の疑いの発火源は、ライターが1,090件で最も多くなっています。

近所づきあいが点数になるのはなぜですか

放火は人目を避けて行われるからです。声を掛け合う関係があると、知らない人がうろついていることに気づけます。対策集にも「不審な通行人に気付いたら動向に注意する」「地域における一声運動に心掛ける」と書かれています。

事業所の場合はどうなりますか

同じ資料に事業所用の評価シート(26項目)もあります。出入り管理、夜間・休日の巡回警備、防炎シートでの被覆といった項目が加わり、防火管理者の選任や消防計画の周知も点数になっています。事業所の義務は防火管理者は何人から必要かにまとめました。


今日1つだけやるなら、これ

家の外を一周して、燃えるものが置いていないか見てください。

玄関横の段ボール、物置の脇の新聞束、自転車のカゴのチラシ、ベランダや共用廊下の荷物。配点24点の項目で、しかも費用はゼロです。

センサーも監視カメラも、買えば効果はあります。ですが消防庁の採点では、それより片づけのほうが高い点数です。先にこちらを済ませてください。


今日のチェックリスト

  • 家の外周に燃えやすいものを置いていないか見た
  • 共用の廊下・階段に私物を置いていないか確認した
  • ごみは回収日の決められた時間帯に出すと決めた
  • 自転車・バイクのカゴを空にした
  • 郵便受けの新聞やチラシを取り込んだ
  • 門扉・車庫・物置に夜間の鍵をかけた
  • 玄関灯や門灯を夜つけるようにした
  • 消火器の使い方を家族で確認した
  • 長期の外出時に新聞を止める手配を覚えた

まとめ

令和6年の放火は2,377件で出火原因の4位ですが、放火の疑いを含めた3,904件は全火災の10.5%で、1位のたばこ3,058件(8.2%)を上回ります。発火源はライターが最多です。

放火は他人の行為なので、「しない」ではなく「されない環境をつくる」が対策になります。狙われるのは人目のない場所、暗い場所、深夜です。

消防庁の26項目のチェックリストでは、侵入監視センサーが12点、監視カメラが17点なのに対し、燃えやすいものを置かないが24点、近隣と話し合ったことがあるが23点でした。機械より、片づけと近所づきあいです。

家の外を一周して、置いてあるものを片づける。今日できるのはそれで、しかもいちばん点数が高い項目です。


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